夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

私の嫌いな食べ物

 「食」を扱う研究者として、「嫌いな食べ物はない!」と言い切りたいのですが、どうしても苦手なものがあります。

 それは、シイタケです。

 傘の裏のヒダヒダが許せないのもありますが、なんといってもシイタケ独特の香りが大の苦手です。他のキノコはその香りが強くないのでよく食べます。味はおいしいので…。

 小さい頃から、食卓に頻繁に上っていたことも嫌いになった原因の一つでしょう。小学校時の下校の際、自宅の100m手前で自分の家で煮ているシイタケの匂いを感知したことがあります。嫌いな匂いには体が警報を鳴らすので、敏感に反応するものです。私の体の細胞は、シイタケの匂いを受け付けないようにできているようです。

 そのシイタケ独特の香りの成分は、レンチオニンとよばれる硫黄を含む環状化合物です。
 ↓レンチオニン

 この化合物の構造式を見ていると、なんとなくシイタケに見えてくるところがまた腹立たしいです。

 また、キュウリのあの青臭さが苦手な人も多いですが、キュウリの香気成分は、キュウリアルコール(trans,cis-2,6-ノナジエノール)とスミレ葉アルデヒドtrans,cis-2,6-ノナジエナール)によるものです。
 ↓キュウリアルコール

 この化合物もずっと見ていると、キュウリに見えてくるのが不思議です。

 嫌いな食べ物も、その嫌いな成分をきちんと知っていれば、最低限その食べ物に対してリスペクトしたことにはなるでしょう。