夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

食品の品質管理とゴールキーパー

 生のスポーツ観戦が好きです。カナダ留学中は、よく野球(MLB)、バスケットボール(NBA)、アイスホッケー(NHL)などを見に行っていました。カナダは特にアイスホッケー発祥の地だけあって、熱狂的なファンが多く、試合はいつも尋常ではないくらい盛り上がります。

 アイスホッケーやサッカーの試合を見ると、私はGKゴールキーパーになんとなく目がいってしまします。独特の孤独感・悲壮感が漂っているゴールキーパーに、少なからず感情移入してしまうのです。

 サッカーのフォワードは、99回シュートを失敗しても最後に1回のゴールを決めれば賞賛されるのに対し、ゴールキーパーは99回のファインセーブをしても、1回の凡ミスでゴールを許してしまえば責任を問われてしまいます。

 食品企業の「開発」部門は、企画した案が大量にボツになったとしても、最期に一つでも案が通れば成功といえるでしょう。それに対して「品質管理」部門は、たった一つの製品に異物でも入るようなことがあれば、全品回収の事態となり、大きな責任が問われます。

 サッカーのゴールキーパーと食品の品質管理の仕事は、ミスが許されないという点で、なんとなく似てるなぁと思います。

 サッカーの試合で、ゴールキーパーが脚光を浴びることはあまりありません。ミスをした時の方が、スポーツニュースで取り上げられる確率が高いでしょう。食品企業でも、異物混入などがおこると、マスコミに大きく取り上げられます。

 欧州の少年サッカーチームでは、最も身体能力がある子が、ゴールキーパーに選ばれるといいます。食の安全を守る品質管理の仕事は、食品メーカーにおいて最も重要なポジションの一つでしょう。私はこの「食品企業のゴールキーパー」を陰ながら応援しています。