夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

感動は「人」と「自然」からやってくる


 先日の京都で感じたこと。

 京都は、本当に手の込んだものが多い街です。寺、仏像、庭しかり、和菓子、湯葉、漬物、七味などの食べ物しかり。なんでも「いちいち」凝っていてセンスがいいです。

 街に歴史があるので、千年以上も前からの「人の思いの集積」が、街全体にあふれています。その魅力が、世界中から観光客を吸い寄せる所以でもあるのでしょう。

 人は、人によって感動させられるものです。演劇やミュージカルは、まさに人からのエネルギーを直に感じるものであるし、建築物や絵画から受ける感動も、結局はそれらのモノを通じ、つくった「人の思い」に感動しています。

 京都はまさに人からの感動を浴びる所だなと感じました。

 京都の旅が「人」を感じるのとは対象に、屋久島や白神山地を見るツアーというのは、ある意味、人とは対極ともいえる「自然」に感動する旅です。

 私はこれまで上司からの熱い一言に胸が熱くなったり、昨年のWBC決勝のイチロー選手の打席に震えたりと、多くの「人」から感動を受けてきました。またその一方で、留学先でのカナダの大自然に言葉を失ったりと、「自然」からの感動体験ももちろんあります。

 自分は「人」から受ける感動が大きいのか、「自然」からの感動の方が大きいのか、どちらなのかはよく分かりませんが、一般的に女性はニュージカルや絵画など「人」を感じる旅が好きで、男性は「自然」派が多い気がします。

 「人」からの感動は、自分の「内」に入ってくる感動なのに対し、「自然」からの感動は、自分の「外」へ広がる感動のように感じますので、感動のタイプが異なるのかもしれません。

 食べ物も、「人」の手が込んだフランス料理のような料理が好きな人も入れば、「自然」の素材そのものの美味しさを味わう日本料理の方が好きな人もいるでしょう。

 食の感動体験は、「自然の恵み」とそれを作ってくれた「人の思い」がうまく融合されたときに最高に高まることは、間違いありません。