夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

液体窒素アイスクリーム - 究極のアイスクリーム作り -

 安価なカップタイプのアイスクリームとハーゲンダッツのようなプレミアムタイプのアイスクリームの違いは、味やコクはもちろんですが、なんといってもその「舌触り」でしょう。とろける「滑らかさ」は、アイスクリームに欠かせない魅力の一つです。

 アイスクリーム滑らかさは、アイス組織中の氷の結晶(氷晶)の大きさと密接な関係があります。氷結晶の大きさと舌触りの関係は、顕微鏡などで観察すると、

  • 氷結晶 < 35 µm → 著しく滑らかなアイスクリーム
  • 氷結晶 = 35~55 µm → 滑らかなアイスクリーム
  • 氷結晶 > 35 µm 粗いアイスクリーム

となります。

 この氷結晶は、アイスクリームの生地を凍らせる時間が長いほど、ゆっくり凍らせるほど大きくなり、食べるとざらつくアイスクリームになります。すなわち、より短時間で凍らせたアイスクリームほど、氷結晶の生成が抑えられ、滑らかで美味しいアイスクリームになるのです。

 究極の滑らかさをもつアイスクリームは、”一瞬で”凍らせたものであるといえます。

 理系の研究室によくある「液体窒素」は、瞬間的にものを冷やすのに大変適しています。−196 ℃という超低温であるため、取り扱いには十分注意しなければなりませんが、無味無臭であるため、食品に直接添加しても特に問題はありません。この液体窒素を用いて作ったアイスクリームこそが、究極の美味しさをもつアイスクリームと言えるでしょう。

 とある日、研究室の学生達を巻き込んで「液体窒素アイスクリーム」作りをしてみました。
 まずは、ボール内でアイスクリームのミックス(生クリーム、牛乳、砂糖、卵黄など)を作り、液体窒素を投入すると、こんな感じに。沸き立つ白い冷気でボールの中身が、見えません。

数分泡立て器でかき混ぜただけで、ほぼ完成しました。

 さらに、「液体窒素イチゴシャーベット」に挑戦。新鮮なイチゴを、ミキサーで粉砕し、

液体窒素を入れ、力を込めてかき混ぜ、かき混ぜ。気分はイリュージョニスト!

液体窒素を何度か”おかわり”し、混ぜ続けると粒状のシャーベットがあっという間に完成。

 みんなで試食しましたが、アイスクリームもシャーベットもなかなかの出来でした。特にシャーベットの方が念入りに冷やしたためより美味でしたね。ご家庭ではちょっと真似できませんが、液体窒素のある研究室などでお試しください。

 安全のため「手袋とゴーグルの着用」と「換気」はお忘れなく。