夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

歩くトウモロコシ

 昨日紹介した「雑食動物のジレンマ」で印象に残った文章を紹介します。

 現在、私たちの食を支えている工業的食物連鎖は、ふつうはスーパーやファストフード店などにたどり着く。その鎖の始まりを突き止めようとすれば、様々な場所に行き当たることになるだろう、と私は予測した。そして実際に全米の数々の州を訪ね、長い道のりを旅した。ところが旅の終点はは、いつも同じ場所だったのだ。それは、アメリカ中西部のトウモロコシ栽培地帯コーンベルトの農場だ。(中略)
 加工食品の場合、トウモロコシはさらに複雑な形で登場する。たとえばチキンナゲットは、トウモロコシを積み重ねてつくった代物だ。まずトウモロコシを食べる鶏の体は、当然トウモロコシでできている。他の成分も同様だ。つなぎはコーンスターチ、衣はコーンフラワー、揚げ湯はコーン油。(中略)膨張剤にレシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド。美味しそうなキツネ色に仕上げる着色料や、揚げたて風味を保つクエン酸。そのすべてが、見た目だけではわからないが、トウモロコシからつくることができるのだ。
 チキンナゲットを飲み下そうと何か清涼飲料水に手を伸ばせば、トウモロコシを食べながらトウモロコシを飲むことになる。1980年代から、すべての清涼飲料やほとんどのジュース飲料に、異性化糖製品の高果糖コーンシロップが甘味料として使用されている。(中略)
 アメリカの平均的なスーパーには四万五千もの商品があり、その四分の一以上には実はトウモロコシが入っている。食品だけではない。歯磨き粉から化粧品、紙オムツ、ゴミ袋、洗剤、豆炭、マッチに乾電池、レジの近くで目を引く雑誌の表紙の光沢までも、その正体はすべてトウモロコシでだ。

 「食は人なり」とよく言われますが、アメリカ人の体は、大部分がトウモロコシでできていることになりますね。まさに「歩くトウモロコシ」といったところでしょうか。
 日本人の体は、いったい何でできているのでしょうか。私はたまごかけご飯を毎朝食べるので、体の三分の一は「米」と「卵」からできていますね。

wikipedia::en:wikipedia:Bert (Sesame Street)より
 セサミストリートに登場するバート君(右)は、まさにアメリカを代表とする方なのかもしれません。