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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

モスの「国産バーガー」の疑問

 先日、久しぶりに近くのモスバーガーに行き「国産バーガー」というものがあることを知りました。その登場時のニュースがこちら。

自給率向上へ官民タッグ ビジネスと消費牽引

 昨年12月、ハンバーガー大手のモスバーガーが東京都品川区の本社で開いた新商品の発表会。輸入品がほとんどを占めている主要素材の牛肉と豚肉に国産品を採用したハンバーガーが登場した。
 民間企業の発表会としては異色の人物が出席していた。農林水産省食料安全保障課の末松広行課長。昨年4月に発足した食料安全保障課は40%まで落ち込んでいる日本の食料自給率の向上を目指しており、末松氏はその責任者だ。末松氏は会見で「国産食品を国民に選んでもらいたい」とあいさつし、「国産バーガー」を自給率向上の象徴的存在にしたいとの強い意欲をみせた。

2009.1.26 21:32 MSN産経ニュース

 お店の広告でも「国産肉100%使用」という言葉が踊っていました。しかし、このモスの国産バーガーが自給率向上につながるかは私は大変疑問に思います。

 当たり前ですが、肉となる牛は豚はエサを食べます。現在そのエサのほとんどは輸入に頼っています。日本で、牛の飼料自給率は27%、豚の自給率はたった10%です(農林水産省:平成18年度食料自給率レポートより)。

 ですので、国産牛肉100%の肉であっても、カロリーベースの自給率は27%、国産豚肉の自給率は10%に過ぎません。つまり、日本にいる牛の体の73%、豚の90%が結局”外国産”なのです。

 本当に国産100%の肉とは、国産飼料のみで生産されている肉ですが、そのような肉は、豚肉の場合、日本で消費される肉のたった5%です。

 モスの「国産バーガー」が「国産飼料のみで生産されている肉」を使用していれば、間違いなく日本の自給率向上に役立つでしょうが、通常の外国産の飼料を与えている家畜の肉を使ったバーガーを食べていれば、平成19年度の食料自給率40%よりも、確実に下回るでしょう。

 また、国産バーガーのレタスやトマトは100%自給できるでしょうが、バンズの部分の小麦の品目自給率は平成18年度でたったの13%です。

 「真の国産バーガー」は、国産の小麦粉を使ったパン、国産の飼料のみを与えた牛、豚の肉から作ったハンバーグ、国産の野菜からなるものです。しかし、そのようなバーガーは、いったい1個いくらになるでしょう? はたして、千円で作れるでしょうか。

 結局、普通にハンバーガーを食べて、日本の食料自給率が上がるわけがありません。先の農林水産省食料安全保障課の課長さんがモスの「国産バーガー」を自給率向上の象徴的存在にしたいといっていることが私には到底信じられません。

 私はモスバーガーを批判したいのではありません。モスは大好きで、よく利用します。

 私はなぜモスバーガーが、看板メニューで一つある「ライスバーガー」を自給率向上の象徴にしないのかが不思議なのです。「モスライスバーガーきんぴら」は、ほとんど国内自給率100%でつくれるではないですか。