夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

食料自給率を上げるには、「パニック」というショック療法しかないのか?

 新型インフルエンザ、そしてこの前の北朝鮮のミサイル(人工衛星)発射といい、日本の騒ぎようはいったい何なのでしょうか? お祭り好きな日本人の国民性が、これらの騒動に対し遺憾なく発揮されています。大方の人は冷静に対応していると思いますが、マスコミのパニック症候群ともいえる報道にはあきれるばかりです。

 新型インフル以上に深刻な問題は山ほどあります。超高齢化が進む日本の農業、40%を切った日本の食料自給率などは、農業の後継者育成も考えると、もう待ったなしの問題です。食はすべての人の命に直接関わりますから、国民一人一人が考えなければならない問題のはずです。新型インフルエンザぐらい食料自給の問題を報道してくれたらと思いますが、このような問題に対してマスコミは驚くほど不感症です。

 以前、私のブログ*1で、「日本人全体が農業、農業従事者に尊敬の念を持たないかぎり、日本の食料自給率が向上することはない」と書きました。行政のトップや一部の者が「自給率up、自給率向上」といってもダメで、国民全体の「食料自給率を上げたい」という思いの総量が大きくならない限り、問題は解決しないでしょう。ドラゴンボールZで魔人ブーを倒す時、地球人から集められた「元気玉」と一緒です。

 都市部を中心に多い食糧問題に無関心の日本人に問題意識を持ってもらうためは、正攻法で説得するよりも、危機を最大限にあおってパニック(お祭り状態)にさせたが効果的ではないかと、というか、それしか方法はないのではないかと最近の報道を見て感じるようになりました。人の恐怖をあおって物を売る「恐怖商売」「ホラー商売」は私の最も軽蔑することの一つなのですが…。

 都市部を中心に「食糧危機」の大パニックが起き、各人が少なからず「飢え」を体験しない限り、ここまで下がった食料自給率はやすやすと向上しないでしょう。

*1:食品研究者の夜食日記:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20090112/p1:title=食料自給率アップに最も大切なこと]