夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

白いイチゴ、白いたい焼き、白い卵黄

 食べ物の美味しさに、見た目の色は大変重要なファクターです。

 左の写真は、私がある所で買ったソフトクリームです。写真は一切色調補正しておらず、撮ったままの色です。バニラソフトクリームの上に鮮やかな原色のブルーのチョコレートがコーティングされています。

 冬に買って食べたのですが、身体的にも精神的にも相当冷えきった記憶があります。

 野菜やお肉などの生鮮食料品を買うときに、商品の外観、特に「色」は購入動機のかなりのウェートを占めるでしょう。変色した野菜や肉を買う人はまずいません。

 何年か前に「黒い食品」ブームがありました。黒豆、黒酢、黒ごまなど。黒豆ココアのポリフェノール効果が盛んに宣伝されていた記憶が私の頭にかすかに残っています。

 最近、この黒の反対「白い食品」のニュースを毎日新聞で2つ見かけました。

白いイチゴが人気 その名も「初恋の香り」


 熟しているのに、白っぽい色をしたイチゴが人気を集めている。その名も「初恋の香り」。いったいどんなイチゴなの?【遠藤拓】

 東京・赤坂の果物店「サン・フルーツ東京ミッドタウン店」。この時期には珍しいサクランボ「佐藤錦」や宮崎県産の完熟キンカン「たまたま」など、高級な果物に混じって、陳列棚に白いイチゴが並ぶ。

 外見はほんのりとピンクがかった白色で、中の果肉は真っ白。一見して熟していないようだが、実際は酸味が少なく、しっかりとした甘みが口に広がるという。

 「あればあるだけ、すぐに売り切れてしまいます。紅白の組み合わせにすると、お祝い用の贈答品としても喜ばれています」。石山良信店長(54)はこう胸を張る。

 同店では、日によってまちまちだがほぼ毎日、1パック(12〜18個)前後が入荷する。ばら売りの場合は1個あたり約25グラム〜約40グラムで840〜1050円(消費税込み)。赤と白、各6個ずつの組み合わせになると8400円(同)だ。

(毎日新聞 2009年2月19日)

たい焼き:もちもち食感 福岡生まれは「白」


 たい焼きと言えばきつね色、という概念をぶち壊した福岡生まれの「白いたい焼き」人気が全国に広がり始めた。色のみならず、従来のたい焼きと違うもちもちの食感が受けている。これらの店に多いのは異業種からの参入組。「外からの目線」で長引く不況を吹き飛ばす。「庶民の味」たい焼きの誕生から、今年で100年−−。【尾中香尚里】

 福岡市南区の西鉄大橋駅地下に1月開店した「武屋」大橋店。白あんや黒あんなど定番のほか、カレーやジャーマンポテトなど、日替わりで意外な味のたい焼きも並ぶ。

 「初日は3000匹が売れた」と同社の吉武秀悟社長(34)。06年に福岡県大木町で創業し現在11店舗を展開中。6月には初の東京出店を目指す。

(毎日新聞 2009年5月8日)

 また、ちょっと古いニュースですが、”白い卵黄”というのも一時期話題になりました。卵”黄”という時点で黄色が当たり前と思いがちですが、黄身の色は、鶏のエサの中の色素(トウモロコシやほうれん草に含まれるルテインなどの色素)が卵に移行したものなので、エサの中の色素を抜いてやれば(色素を含まない米などのエサを与えれば)、白い卵黄ができます。

http://www.life.com/より)

 卵黄が白いので、ゆで卵にすると、黄身と白身の境界線が分かりにくくなります。白い卵黄で作ったケーキも黄色っぽくならず、真っ白なスポンジになります。色素は味に関係ないので、見た目が白っぽくて味が薄そうなケーキも、食べてみると通常の卵が入った物と変わらない黄身のコクがあります。

 白いイチゴも白いたいやきも白い卵黄の卵も私は生で見たことはありませんが、今まで「この食べ物はこの色」という固定観念があるので、それらの食品と対峙した時はちょっと頭が戸惑うでしょう。普段いかに人は”目で食べている”かが実感できるはずです。

 また食べると今度は味でギャップを味わうのでしょう。「見てびっくり、食べてびっくり」の”ダブルサプライズ”が白物家電ならぬ”白物食品”の最大の特徴です。