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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「そば入りそうめん」ではなく「そば」が食べたいのです

食料品 食品偽装 食品表示 食材


 わたくし、無類の蕎麦好きです。一日一回は蕎麦を食べたいと思っています。おいしい蕎麦屋があると聞けば、どこにでも駆けつけます。

 家でも乾めんの干しそばをゆででよく食べますが、買うのは決まって100%そば粉で作った十割蕎麦です(そば湯もおいしい!)。十割蕎麦が売っていない時は、裏の原材料表示を見て、小麦粉よりもそば粉が先に書いてあるもの、つまり小麦粉よりもそば粉の含量が多いものを購入します。

 そんな蕎麦好きを裏切る、食品不正表示事件が先日ありました。

 東京都三鷹市にある製粉会社が、原料は7割が小麦粉で、そば粉は3割しか含まれていなかったにも関わらず、原材料欄には「そば粉、小麦粉」の順で表示し、そば粉の方が多いように装い、警視庁生活経済課が、4月30日、日本農林規格(JAS)法違反容疑で製粉会社本社や工場、社長宅などを家宅捜索したというものです*1

 また、以前にも「八割そば」として売られていた麺のそば粉の含有量が、66%しかなく、その製麺会社に対して、不適正表示の行政指導が行われたことがあります*2

 小麦粉の含量を多くして、そば粉を減らすのは、もちろんそば粉の原料費が高いからでしょう。そば粉を減らして、小麦粉を多くすればそれだけコストが抑えることができるためです。

 市販されている乾めんそばの袋の裏に書かれている原材料欄を見ると、ほとんどの製品がそば粉よりも小麦粉の方が先に書かれています(スーパーでご確認ください)。麺が黒っぽいからといってそば粉がたくさん含まれているとは限りません。

 蕎麦の基本といえば、そば粉8割、小麦粉2割の二八蕎麦でしょう。小麦粉はあくまで”つなぎ”なはずなのに、実際は市販されているそばの多くは、小麦粉の方が多く使われているという、蕎麦好きには許せない現実がそこにあります。そば粉よりも小麦粉の方が多く入っているものを果たして「そば」といえるのでしょうか。それは、「そば入りそうめん」ではないのでしょうか。

 十割蕎麦に小麦粉を混ぜれば、簡単に偽装が見破られると製造会社は考えるでしょう。しかし、二八蕎麦のようにそば粉と小麦粉の混合物では、その割合を変えたぐらいでは、気づかれないだろうと思っているかもしれません。そもそも、そば粉も小麦粉も同じような色ですし、見た目では分かりません。

 しかし、そばはタデ科、小麦はイネ科であり、そばと小麦粉に含まれるタンパク質の種類が違うので、製品に含まれるタンパク質を調べればそば粉が何パーセント使われているか、比較的簡単に分かるのです。

 また、そばの健康増進機能として、コレステロールや中性脂肪の低下作用があります。この作用は、そばタンパク質の「レジスタントプロテイン」による機能だと考えられています。「レジスタントプロテイン」とは、体内で消化されにくいタンパク質のことで、消化に”抵抗性”をもつそばタンパク質などが、食品中に含まれるコレステロールや脂質を”からめとって”排出してくれるというものです。そばと一緒に脂っこい天ぷらを食べても”OK”なのは、そのためです。

 小麦粉に「レジスタントプロテイン」効果は確認されていませんので、小麦粉含量の高いそばで、上のような健康増進機能はあまり期待できないでしょう。

 「ちょっとでもそば粉が入っていれば、そばいえるのか?」「そもそも、そばに基準はないのか?」

 長くなったので、そのあたりの話は、また次回にでも。