夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

豚インフルエンザ ー私達は鳥インフルで学んだことが生かせるか?ー

 鳥インフルエンザ発生時に、「鳥インフル発生国からの鶏肉は扱っていません」との精肉コーナーに張り出した小売店もあったようですが、これは「鶏肉が危ない」と暗にいっているようなもので、風評被害をむしろ拡大する結果になったことでしょう。

 今回の豚インフルでも、「当店ではメキシコ産の豚肉を扱っていません」のようなことを飲食店や小売店が言い出せば、消費者は「豚インフルの豚肉は危険だ」という認識が植え付けられます。今回の豚インフルが発生したアメリカやメキシコからは日本は相当の量の豚肉を輸入していますから、最悪、メキシコ産を国内産に「産地偽装」する店も出てこないとは限りません。

 インフルエンザのようなウイルスは、感染する相手(宿主)が生きていないと自分自身は増殖できない性質を持っています。そのため、生きている人や豚と違って、生命活動を停止している肉は、ウイルスにとってとても「住みにくい家」なのです。万が一肉がウイルスに汚染されていたとしても、肉の冷蔵貯蔵中にウイルスはどんどん死んでいくでしょうし、加熱、加工すれば死滅するのは当然でしょう。

 小売店や飲食業は、「うちはメキシコ産の豚肉を扱っていません」という”逃げ”の対応をするのではなく、「豚インフルでも、豚肉は安全です」ということを消費者に伝えなければならない義務を負っています。それが、風評被害を広げない第一歩です。

 鳥インフルで学んだことが生かせるか、私達は試されているような気がします。鳥インフルと同じような風評被害が起こらないことを私は祈っています。


 以下、毎日新聞の豚インフル関係のニュースを二つ貼っておきます。

豚インフル:農相「豚肉は出荷段階で完全に殺菌」

 豚インフルエンザ問題について石破茂農相は26日、テレビ朝日の報道番組に出演し、「豚肉は出荷段階で殺菌を完全に行っており、食べても全く問題はない」と述べ、消費者や食品業界に冷静な対応を呼びかけた。また、国内の養豚業について「世界でトップレベルの衛生状態。日本で豚から人にインフルエンザが感染した例はない」と、安全性を強調した。

毎日新聞 2009年4月26日 18時50分

 石破さん、「完全に殺菌」は言い過ぎでしょう。生肉を完全に殺菌できる方法があったら、その方がむしろ危険です。誤った発言は、誤解を生み、より消費者の不安を増強させます。「”厳格”に殺菌を行い、食用には問題がない」というのが正確な表現でしょう。

豚インフル:外食チェーン、流通は冷静 風評被害を懸念

 豚インフルエンザ問題を受け、メキシコ産などの豚肉を扱う外食チェーンや流通関係者は、情報収集や安全性の確認、消費者への説明に追われている。

 全国でとんかつ店や弁当店の「新宿さぼてん」を展開する「グリーンハウスフーズ」(本社・東京都新宿区)は、使用する豚肉のほとんどがメキシコ産。担当者は「輸入の際に検疫検査を通っているほか、感染が確認された地域とは別の産地から仕入れており、安全性に問題はない」と強調する。

 同社は25日の営業開始に先立ち、各店の責任者に同様の説明をした。25、26日とも客足は普段通りで、問い合わせもほとんどなく「鳥インフルエンザの時のようなパニックは起きていない」という。

 メキシコ産を使っていない別のとんかつチェーンの担当者も「今のところ、影響は出ていない」。ただ、「風評被害が広がれば、メキシコ産以外も豚肉全体の消費を敬遠する空気が広がりかねない」との懸念の声も漏らす。

 メキシコ産豚肉を傘下のスーパーなどで販売しているイオンは「豚肉自体に問題があるわけではない」と、危険性が確認されない限りは販売は継続する方針だが、WHOや政府の対応などを見極めた上で、週明け以降に再度、対応を協議する。

 また、取引先の食肉加工会社の要請で、今年からメキシコ産の取り扱いを検討していた大手商社、兼松の食品担当者は「消費者の心理が冷え込むのは避けられず、当面、取引は見送らざるを得ないかもしれない」と話している。【窪田淳、秋本裕子】

毎日新聞 2009年4月26日 21時59分

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