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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

豚インフルエンザ ー怖いのは、”豚肉”ではなく”感染した人”ー

食の安全安心

 アメリカとメキシコで豚インフルエンザの人への感染が確認され、世界保健期間(WHO)が警戒態勢を取り始めました。

 BSEの牛、鳥インフルの鶏、そして今回の豚インフルの豚と、これで主要な家畜・家禽の問題が出そろいました。普通の人が、豚といえば”豚肉”を連想しますから、心配性の人は「しばらく、豚肉を食べないようにしよう」と考えるに違いありません。

豚インフルエンザ:豚肉、食べても大丈夫 農水省「冷静に」

 農水省は、食肉を通じて人に感染する心配はないとして、食品業界や消費者に冷静な対応を求めている。

 同省によると、豚肉は07年度、米国から約28万トン、メキシコから約5万トン輸入された。豚がインフルエンザに感染しても、ウイルスは呼吸器に付着し肉を汚染しない。

 万が一汚染があったとしても、加熱すると死滅するため、感染の恐れはないという。また、同省によると、豚のインフルエンザは国内でも毎年のように発生しているが、豚は短期間で治っている。生きた豚が輸入されたとしても、検疫所内の施設に隔離して対応するという。【奥山智己】

毎日新聞 2009年4月26日 東京朝刊

 ウイルスは呼吸器から宿主に入って来るので、基本的に肉までは汚染しないのが一般的です。鳥インフルエンザでも鶏肉や鶏卵を食べることによって、人に感染したという事例はこれまで報告されていません。たとえ、肉にウイルスが付着していても、中心温度を71℃以上に加熱すれば、他の細菌やウイルスと同様に豚インフルエンザは死滅するので、問題ないと考えるのが普通です。

 私のよく行くスーパーでもアメリカ産の豚肉は見かけますが、今のところ、流通や食肉加工大手も冷静な対応をし、豚肉の流通を止めるような対応は必要ないと判断しているようです。あとは、消費者が冷静な対応をとれるかですが、鳥インフル発生時、風評被害等により鶏肉の消費が一時的に落ちましたので、きっと今回の豚インフルでも、同じことが少なからず起こることでしょう。

 豚インフルで怖いのは豚肉ではなく、なんといっても「豚ウイルスに感染した人」です。

 感染した豚は、封じ込めればその拡散を防ぐことができます。また、ウイルスの感染が「豚から人」だけであれば、豚と接触する人というのはそんなにたくさんはいないですから、業界の方々に十分な警戒と対策をとっていただければ収束するでしょう。

 しかし、豚インフルエンザが、人のインフルエンザのように、せきやくしゃみなどでウイルスが飛び散り、他人の口や鼻から感染すれば、大変なことになるでしょう。いわゆる”パンデミック(世界的大流行)”が起こるかもしれません。

 WHOは、まだ人から人への感染は十分に確認されていないので、警戒のレベルはフェーズ3(人から人への感染が全くないか極めて限定的)となっています。これがフェーズ4(人から人への感染が増加する兆候がある)となれば、新型インフルエンザの発生が事実上認められたことになるでしょう。

 私達はまずは冷静になり、豚インフルのニュースを”読み解く”ことです。