夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

食品偽装疲労

 今年の冬もインフルエンザが猛威をふるいました。今年は特に、タミフル耐性ウイルスが見つかり、また流行が3月にも再燃したことから、患者数も例年と比べて多かったようで、インフルエンザに関心が集まった年といえるでしょう。

 しかし、一部の国では「フルー・ファティーグ Flu Fatigue(インフルエンザ疲労)」といわれ、インフルエンザのニュースをメディアが取り上げない事態が生じているそうです。鳥インフルエンザの報道も、以前より取り上げられ方が大人しいような気がします。毎年毎年、新しいウイルスの登場が報道され続けた結果、国民やメディアの関心が薄れてきているようです。

 同じことが、食品偽装のニュースにも当てはまる気がします。昨年の船場吉兆、丸明の飛騨牛などの食品偽装・不正表示の報道が大々的になされた時と比べて、最近の「タケノコ」や「山菜」の産地偽装などは、基本的にこれまでと似たような不正をしているにもかかわらず、メディアの扱いは極めて小さくなっています。

 国民は、これまでの大量の食品偽装ニュースを浴びた結果、それらに応答しない「食品偽装疲労」に陥っているといえるでしょう。

 日本人の「熱しやすく冷めやすい」という気質は、商品や観光スポットだけでなく、ニュースという情報でさえ”消費”します。インフルエンザや食品偽装問題を「一過性のブーム」のように騒ぎ、その後に急速に冷めてしまうというのはいかがなものでしょう。

 ホラー映画のように、本当に怖い瞬間というのは、油断したスキにこそやってくるものです。