夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

何千年も前のハチミツをなめようとしたら…

 1800年、エジプトで発掘調査をしていた考古学者がハチミツの入った大きな壺を発見した。開けてみると、何千年も経っているにもかかわらず、中のハチミツはまったく変質していなかった。考古学者は、なめてみようとして壺に指を突っ込んだ。すると、ハチミツのなかに髪の毛が見えた。ハチミツを全部空けてみると、中からあらわれたのは、完璧な保存状態の”胎児のミイラ”だった。
 ハチミツは、あの世への旅立ちのはなむけとしてしばしば死者に捧げられた。ハチミツは不死の象徴だった。

 これは私が担当している食品加工貯蔵系の講義の一番初めにするオープニングトークです。

 その後、ハチミツがなぜ保存性を高めるのかを科学的に説明していき、食品加工貯蔵を学ぶ意義や目的などを話していきます。

 講義の最初でいかに学生がその講義に興味を持ってくれるかが、その後の講義の流れを大きく左右します。その点、このハチミツネタは、後の学生アンケートでも「プロローグが衝撃的だった」と書く人が多く、“つかみ”としては手応えを感じています。