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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

クローン食品の安全は、委員会でなく消費者が決めるという現実

食の安全安心


 クローン家畜の安全性のニュースから。

クローン牛・豚は安全 食品安全委が厚労省に答申へ


飼育中の体細胞クローン牛=茨城県つくば市の畜産草地研究所
 体細胞クローンの安全性を検証していた内閣府の食品安全委員会は12日、成長したクローン牛や豚の食品について「従来の牛や豚と同等の安全性を有する」とした専門調査会の報告書を、全会一致で了承した。
 委員会は、報告書を安全評価書案として一般に公表し、30日間、意見を募集。改めて意見を検証した上で、厚生労働省にクローン食品の安全性を認める答申を行う見通し。
 クローンは、高品質の家畜を同じ遺伝子でコピーする技術で、人工授精などと併用して大量生産を可能にする。国内では研究段階だが、欧米では安全性を認める公的機関の報告が相次いでいるうえ、クローン家畜の子孫がすでに流通している可能性も指摘されている。国内流通の可否は、答申を受けて厚生労働省農林水産省が判断するが、今後、海外から輸入を求められる可能性もある。
 委員会は昨年4月、厚労省から諮問を受け、安全性の検証に着手。下部組織の専門調査会と専門家グループに検討させた結果、安全と認める報告書が出されたため、同日、改めて内容を審議し了承した。見上彪委員長は「安全性を科学的に論じた。(流通すれば)孫と一緒に腹いっぱい食べたいと思う」と強調した。


(産経MSN 2009.3.12 19:56)

 食品安全委員会の体細胞クローン牛が食品として安全であるという報告は、遺伝的にもとの家畜とほとんど同じなのですから至極当たり前の話です。

 しかし、前のブログ、クローン牛に不安を抱くのはなぜか?でも書きましたが、このクローン食品の問題は、その科学的な安全性にあるのではなく、クローンという新しい「技術」に対する消費者の不安が大きな要因です。家畜のクローンといっても、ヒトのクローンを想像させ、倫理に反する印象がクローンという言葉にべったりと張り付いているからです。

 そのため、食品安全委員会がどんなに「科学的に安全です」といったデータを見せたとしても、消費者団体の「本当にクローン食品は安全なのか」という疑念は一向に晴れない訳です。また、危険性を証明するよりも、安全性を科学的に証明することは、はるかに難しいという背景もあります。

 クローン食品が安全かどうかは、食品安全委員会ではなく、消費者全体の意識(民意)によって決まっていくでしょう。科学的データは変わりませんが、消費者の意識は時代によって変わります。

 周りの雰囲気に惑わされないためにも、消費者は新しい技術に対する正しい知識を得て、科学的な判断能力を養わなければならない時代になったといえるでしょう。そのためには、個々人の科学的リテラシー(literacy)の育成がとても大切です。

 その基盤となるのは、児童や生徒の「理科嫌い」や「理科離れ」をなくしていくことです。理科教育は、”大人の”行動をとるための大変重要なプロセスです。