夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

乾燥食品の歴史

 紀元前1万二千年には、エジプトの下ナイルで砂漠の熱砂を利用して魚や鳥肉の乾燥が行われていたことが分かっています。乾燥は効果的な食品の保存法でした。

 紀元前1700年頃に最盛期を迎えた古代バビロニアでは、乾燥させて砕いた魚肉をポタージュに割り入れ、どろっとしたペーストを作って食べていました。こうした保存法は、他民族の侵略と諸王朝の崩壊を越えて生き残りました。

 自然条件の厳しい地域では、食品の保存は、生き延びるために不可欠の行為でした。

 アレクサンダー大王に従ってマケドニアからインドまで遠征したある指揮官が、パキスタンの海岸地帯に住む民族によって乾燥食品がどれほど重要だったかを書き残しています。彼らは普段魚は生のまま食べていましたが、大きな魚はすっかり干からびるまで日干しにし、長期間保存していました。乾燥した魚を砕いて、その粉でパンや菓子を作っていました。また、彼らの飼っていた羊の餌も干した魚でした。その地には、草が全く生えなかった土地だったからです。