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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

近所にファストフードの店が増えると、脳卒中になる?

 CNN.co.jpで目に留まった記事から。

近所のファストフード店の数、脳卒中リスクと関連あり?


近くにあるファストフード店の数と住民の脳梗塞リスクに相関性があると、米ミシガン大学の研究者が19日、カリフォルニア州サンディエゴで開催中の国際脳卒中学会で発表した。

ミシガン大学のルイス・B・モーゲンスターン博士の研究チームは、2000年から2003年にかけてテキサス州ヌーセス郡で発生した血栓による脳卒中1247件について調査。

郡内に262あるファストフード店と患者の住宅を地図上で確認すると、ファストフード店が1店増えるごとに、脳卒中リスクが1%高くなっていたという。

しかし、モーゲンスターン博士は、この調査結果はファストフード店によって近くに住む人が脳卒中になるということを証明するものではないと警告。ファストフードそのものが脳卒中を引き起こしているのか、ファストフード店の数が不健康な地域の指標なのか、分からないとしている。


(2009.02.20 CNN Japan)

 インパクトがあるタイトルですが、解説は非常に歯切れの悪い感じになっています。「ファストフード店の数と脳卒中の人の住所を調べたら相関性のあるデータが出たけど、それしか調べていないから、それ以上のことは何も言えないよ」ということなのでしょう。

 この研究には、はっきりとした意図(仮説)があります。つまり、連想ゲームで考えると次のようになります。

 1.周りにファストフードの店が増える → 2.ファストフード店をよく利用するようになる → 3.脂質や塩分を過剰に摂取する → 4.脳梗塞のリスクが増加する

 しかし、ファストフードと脳梗塞リスクを考えるのであれば、各人のファストフードの"利用回数"と脳卒中の発症との関係を調べれば直接的なのに、どうしてわざわざ近所のファストフード店の数を調べたのでしょうか。

 研究グループが持っていたデータがそれしかなかっただけかもしれませんが、この米ミシガン大学の研究者らは、上の連想ゲームの「2→3→4」のデータでは当たり前すぎて新規性がないと考えて、あえて「1→」のような項目を新たに設けることで発表のインパクトが上がると考えたのでしょう。現に、このようのCNNに取り上げてもらった訳ですからもくろみは成功しました。

 しかし、「1→4」の論理は飛び過ぎのため、発表した本人もまともな考察ができなくなっています。「1→2」の近くのファストフード店の各人の利用行動は、医学ではなく、いろいろな要素が絡んでいますので、データを解析する上でより複雑にしています。

 ニュースをさっと見ただけですと「近所にファストフードの店が増えると、脳卒中になる?」とか「ファストフード店の多い地域は、病気になりやすい?」などの誤解を生みやすい調査結果です。この報告から何が言えるのか、どんな推測ができるのか、どんな仮説が立てられるのか、まともな解説が欲しいところです。