夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「スイーツ、ショコラ、シャンパーニュ」いつからこの名前になった?


 明日はバレンタインデー。

 至る所でチョコレート売り場が増強されており、日本のバレンタインデーは、恋人たちの愛の誓いの日というよりも、チョコレート消費のビッグイベントと化しています。

 料理雑誌では、バレンタインデーに送るようなチョコをチョコレートとは呼ばす、必ず「ショコラ」といいいます。お菓子全般も、あるときから完全に「スイーツ」一辺倒に変わりました。シャンパンも料理雑誌はかたくなに「シャンパーニュ」という言葉を使っています。

 それ以外にも、料理関係では、一般の人が余り聞き慣れない新しい言葉への言い換えが頻繁に起こっています。例えば、ある料理雑誌に載っていた和菓子屋の紹介記事(原文のまま)には次のように書かれていました。

 1階は和スイーツのテイクアウト、2階は和バールでランチや料理なども楽しめ、「◯◯◯(店名)」だけの和スイーツが人気である。

 和菓子を和スイーツと言い換えるのは、ちょとやり過ぎのような気がします。和菓子はやっぱり和菓子でしょう。それ以外にも、たくさんの聞き慣れない新種のカタカナ言葉が氾濫しています。

 例えば、下のような、小さな女の子の日記があったとします。

 「きのう、駄菓子屋さんで、綿菓子とチロルチョコを買って食べました。きょうはお母さんと、パン屋さんにあんぱんと食パンを買いにいきました。パン職人さんがいっしょうけんめいはたらいていました。わたしはあまいものが大好きなので、しょうらいはケーキ屋さんになりたいです。」

 ↓これを料理雑誌”風”に翻訳すると、次のようになります。↓

 「きのう、駄スイーツ屋さんで、綿スイーツとチロルショコラを買って食べました。きょうはママンと、ブーランジュリーにあずきパティスリーとパン・ド・ミを買いにいきました。ブーランジェさんがいっしょうけんめいたらいていました。わたしはスイートなものが大好きなので、しょうらいはパティシエールになりたいです。」

 上の文章と下の文章とでは、だいぶその子の印象が変わってくると思います。

 言葉は生き物のようなものなので、変わるのが世の常ですが、あまり新しいカタカナ言葉ばかり使おうとする人や雑誌をみると、私はお尻の辺りがむずがゆくなります。