夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

食物アレルギーを完全に避けることが難しいのはなぜか?

 以前,小学生が学校給食の「そば」の摂取により、アナフィラキシーショックによって死亡するという痛ましい事故がありました。食物アレルギーは、その人の生命をも脅かす問題であるため、重度のアレルギー患者は、摂取するものに細心の注意を払っています。しかし、それでも、食物アレルギーを完全に避けることは難しいとされています。

 その理由の一つは、アレルギー患者はほんの微量のアレルゲンであっても敏感に反応してしまうためです。

 現在、食物アレルギーを引き起こしやすい食品は、その表示が厳格に定められています。しかし、食品中で微量のもの、液化された野菜類のタンパク質や、天然添加物、香辛料などの場合,法律上表示する義務はなく、また製造者自身もその混入に気づかない場合すらあります。

 米国では、ファーストフード店で隠し味にピーナッツが入ったチリソースや、大学の食堂でピーナッツバターをつなぎに使った春巻きを食べてアレルギーを引き起こし、死亡するといった例が後をたちません。また、調理器具や製造容器に前の成分が残っており、アレルゲンが紛れ込む可能性もあります(ピーナッツ入りアイスクリームに使った器具で、違うアイスクリームをすくう場合など)。

 また、ビーナッツアレルギーを持つ人が、飛行機に乗っただけでアレルギーが起きたということが実際ありました。これは、飛行機内の空気中にあったピーナッツの微小の破片を吸入してアレルギーを引き起こしたためです。

 食物アレルギーの基礎的研究や臨床対策などが精力的に行われていますが、有効な治療法は未だ確立されていないのが現状です。食物アレルギー患者にとって、唯一有効な対処方法は、原因食品をできるだけ食べないようにする「除去食療法」だけです。しかし、現在の私たちの食生活は加工食品への依存度が高く、また思わぬところに思わぬ材料が使用されている現状においては、食品アレルギー患者が食物アレルギーを完全に避けることが大変難しい状況となっています。加工食品に関しては、製造者からの正確な情報に頼らざるを得ないというのが現状でしょう。