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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

本当の牛乳の味は、

食旅 食料品

 週末、1泊2日で岩手県の安比高原スキー場に行ってきました。久しぶりに体を動かし、いいリフレッシュができました。
 安比高原スキー場は、スキー場以外にも安比高原牧場を経営しています。ホテルの朝食バイキングで、その安比高原牧場の牛乳を飲んだのですが、「さらり」としていて実に美味しい牛乳でした。おみやげ売り場で販売されているその牛乳の裏ラベルをみたらやはり「低温殺菌牛乳」でした。

 牛乳の殺菌法には、大きく分けて超高温瞬間殺菌(UHT:ultra high temperature)法、高温短時間殺菌(HTST: high temperature short time)法、低温長時間殺菌(LTLT: low temperature long time)法の3種類があります。

 条件は、UHT法が120~150℃で1~3秒、HTST法が72℃以上で15秒以上、LTLT法が62~65℃で30分以上とそれぞれ法令で厳格に決められています。

 牛乳をUHT法のような高温で加熱すればするほど、独特の加熱臭が出てきます。子供が嫌がる牛乳の臭いの原因の一つが、牛乳を加熱したことによって発生する風味で、低温で殺菌すればこのイヤな臭いの発生が抑えられます。絞り立てで低温で殺菌した牛乳ほど、水のようにさっぱりとした後味をしています。

 スーパーなどで売り場面積は狭いですが、低温殺菌牛乳はたいてい売られていますので、殺菌法の違う牛乳の飲み比べ(利き牛乳)をすれば、それらの味の違いがはっきりと分かるでしょう。

 実際,市場に出ている牛乳の95%はUHT法で殺菌され、のこり5%がHTST法、LTLT法で殺菌された牛乳はたった2%に過ぎません。低温殺菌法は、他の殺菌方法と比べておいしい牛乳ができるのですが、時間がかかることや細菌の死滅率がやや低いといった問題があります。

 ホルスタインなどの乳牛は、大きくなれば勝手に牛乳が出ると思っている学生がたまにいるのですが、大きな誤解です。人間のお母さんが出産後に母乳が出始めるのと同じように、牛も子供を出産しなければ牛乳は出しません。牛乳はあくまで子牛のために生産されるもので、人間はその余りを頂いているのです。

 また、母牛が子供を産んで最初の5日間に出す牛乳は「初乳」といって、免疫グロブリンなどの子牛の免疫機能に関わる成分が多く含まれており、市場には出してはいけない牛乳になっています。

 初乳にしろ未殺菌の牛乳にしろ、牛乳の本来の味は、子牛にしか分からないものなのです。