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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

食の安全のコストは誰が払うのか?

食の安全安心 食と経済

 今日の日経新聞に「食の安全 揺れる企業—膨らむコスト、負担どこまで」という記事がありました。「国産」と「安さ」を両方求める消費者に企業が疲弊している様子が書かれていました。

 食の安全には手間もお金もかかります。生産者の方から研究室によく食品の分析を頼まれるのですが、分析にどのぐらい費用がかかるか分かっていない場合がとても多いです。実際かかる費用よりは、だいたい生産者の方が思っている費用よりも桁が一桁大きかったりします。実験試薬や器具というのは、予想以上に高価なものです。例えば、残留農薬を何種類も測定したりすると結構なコストがかかります。

 また、牛肉の安全を確保するためトレーサビリティ(生産履歴)についても、そのシステム構築・維持には莫大なコストがかかっています。

 食の安全にかかるコストは、これまで食品メーカーが吸収してきた場合が多いでしょう。メーカー側は、製品価格にコスト分を上乗せしたくても、日本では小売り業が強いので、なかなか価格に反映しにくいという現状があります。

 以前、何かの意識調査で、消費者は「食の安全、安全」と騒ぐ割に、かなりの人がスーパーで商品を選ぶときの最大決定要因が、結局「安さ」であるというのを目にしたことがあります。当時、「ああ、やっぱりな」と思った記憶があります。自分もそうですから。

 食の安全にかかるコストは、国や企業側が負担するだけではなく、やはり最後は消費者自身も背負わなければならないでしょう。

 不安だ不安だといって、過剰な安全を追求しすぎると、その分のコストが自分に跳ね返ってきます。さまざまな検査をして安全のお墨付きが付いた有機野菜が、普通の野菜の10倍以上の値段だったら、結局誰も買わないでしょう。

 巷で言われているように、「リスク・ベネフィット」という損得勘定が21世紀の日本人にはとても重要になってくるでしょう。