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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「もったいない」と「食の安全」は両立するのか?

食の安全安心 食と社会 食品廃棄

 アメリカのレストランでは、食べ残った食品を持ち帰るための容器を置いているところは普通ですが、日本で残り物の持ち帰りをOKする店はまだ多くはないでしょう。食中毒など衛生上の問題をレストラン側が心配するからです。

 以前、私の講義で学生に次のような小テストを出しました。
Q:ノーべル平和賞を受けたケニアのマータイさんが世界に広めたことで、日本でも再認識された「もったいない(Mottainai)」の精神。 しかし、近年、期限表示の偽装で告発されたメーカー側の一人が「売れ残りがもったいないと思った」と発言して、別の意味で話題になりました。「もったいない」と「食の安全」ははたして、両立しないのか?あなたの考えを書いて下さい。
 学生の解答は次のようなものでした。

A1:両立しないと思います。一度商品や製品として完成した売れ残りを、安全性を確かめず、店頭に並べることは良くないと思います。例え、安全であっても、消費期限が過ぎたものは、偽造していけないと思います。

A2:両立しないと思います。残り物はもったいないと思いますが、食を提供するメーカーとしては、安全が第一だと思います。残り物が100%安全なら問題無いと思いますが、それはありえません。

A3:両立しないと思う。売れ残りがもったいなくて期限表示を偽造したのは食の安全より利益や損失を優先したための事実です。『もったいない』という言葉はその行為の言い訳になっています。

A4:もったいないと思うが売れ残った物を見てからでなく、商品を作る最初の段階からもったいないという精神を持っていれば、食の安全との両立は可能であると思います。売れ残ってもったいないのではなく、もったいないから、無理な生産や利益だけを考えた生産をやめるようにすればいいと思います。

A5:食べ物が余ることをもったいないと思うのは、大切なことである。しかし、「食の安全」との両立は完璧にはできないと思う。売れ残りが出てしまうのを最小限におさえようとしても、やはりゼロにはならないだろうし、食の安全を考えると売れきれるまで店に置くのは危険である。家庭で食事するときに無駄な買い物をしたり大量に残したりしないなど、そのくらいの対策はできると思う。

A6:もったいないと思うことは大切だと思う。日本は食品がたくさんあるので、すぐに捨ててしまう人が多いけれど、食品の賞味期限は目安なので、保存方法によって多少過ぎていても、健康を害さないこともある。賞味期限に関わらず、食べても大丈夫か危ないかを見極める能力が必要だと思う。ただ、今は見極める能力が低下していると思うので、そういう人がなんでもかんでももったいないと思うのは、逆に危険だと思う。だから両立はムズカシイのかもしれない。

A7:「もったいないと」と「食の安全」の両立は難しいと思う。この2つを両立させるには過剰生産はしてはいけないということになる。過剰生産がなくなれば、管理がいき届いた「食の安全」もある程度改善されるかもしれないが、必要な文だけ生産するというのは現実問題難しいだろう。しかし、「もったいない」という精神は大切だと思う。

 私の設問が良くなかったせいもありますが、「もったいない」と「食の安全」は両立しないまたは難しいという意見が圧倒的に多かったのが印象的でした。両立させるためには、どうしたら良いかというところを考えてほしかったのですが。
 もったいない精神と食品の安全に過敏な性質を合わせ持つ私たち日本人。簡単な問題ではなさそうです。