夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

おせち考2—雑煮パトリオット—

 おせち料理の中でも雑煮は、その家庭の独自性が発揮される料理の代表格でしょう。もちは丸餅か角餅か、ダシは何で取るか、醤油ベースか味噌ベースか、具材には何を入れるかなど、家庭ごとにこだわれる部分が満載です。

 普段私は、どちらかといえば変わった味を求める性分なのに、正月に食べる雑煮には保守的な感情が沸き上がってきます。つまり、自分が実家で食べてきた雑煮の味をなぜか求めるのです。

 幸運なことに、妻の実家と私の実家は東日本なので、同じ醤油汁仕立ての雑煮で、ダシに大きな違いがありません。具材にはやや違いがあり、私の実家の雑煮には「芋がら(ずいき)」が必ず入っていました。小さい頃、この見た目の悪く、得体が知らない物体がとても嫌いだったのですが、今では入っていないとなぜか寂しい気分になります。逆に、妻の実家で、いくらが乗った光り輝く雑煮を見たときは衝撃を受けました。

 関西の白味噌の雑煮を愛する人と、東の醤油味の雑煮にどっぷりと慣れ親しんだ人が結婚した場合、その家庭の雑煮はどうなるのでしょうか。違うダシの雑煮には、「融合」の二文字はないでしょう。

 味覚も思考も年とともに保守化するといわれていますが、この雑煮への愛国心は加齢によるものなのでしょうか・・・。認めたくない自分がいます。