夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

おせち考1—おせち異文化ミュニケーション—

 毎年のことですが、年始におせち料理を食べました。結婚してからというもの、私の実家の福島と妻の実家の新潟を年末年始に行き来するので、二つの家庭のおせち料理を食べる機会が増えました。福島と新潟は隣の県ですが、それぞれの県に特徴的なおせち料理があることを結婚後に知りました。
 新潟で欠かせない正月料理は、「のっぺ」と呼ばれる煮物だそうで、冷めた状態食べる珍しい料理です。最初食べたときは、「えっ、温めないの?」と思いましたが、冷やしたぶん、具材により味が染みてなかなか美味しい郷土料理です。
 福島のおせち代表格といえば、「いかにんじん」という細切りの人参とスルメを醤油や酒で漬けたものでしょう。私はおせちの中で一番(唯一)好きな料理で、酒の肴や温かいご飯にも良く合います。大学時代、福島県以外にこの料理が存在しないことを知って愕然とした記憶があります。
 ずっと自分の生家にいる方なら、なかなか自分の実家以外のおせちを食べる機会は少ないのではないでしょうか。しかも、おせちは正月限定の料理ですから、表には出ないシークレットメニューです。
 おせちの食べ比べで、ちょっとした異文化コミュニケーションを感じた2009年の正月でした。