夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

お腹にいる“下宿人”が気になる

人の願望はいろいろありますが、「健康」は古今東西を問わず、普遍的に切望されているもののひとつでしょう。とくに健康が損なわれてしまった場合はなおさらです。 私たちの普段の生活で、その健康に関係する二大ファクターといえば、「食事」と「運動」でし…

『スター・ウォーズ』のあの人を、森永『ダース』のドットで描く

5月4日は、『スター・ウォーズの日』ということをご存知でしょうか。由来は、劇中の名セリフ“May the Force be with you”と“May 4th”をかけていることから来ているそうです。 また、2015年12月に、新シリーズ3部作の第一弾『スター・ウォーズ エピソード7/…

カレー「専用米」の登場―料理のゴールを考えた『料理育種』

私たちが主食としている「一般米」と日本酒用の「酒米」の品種が違うことは多くの人が知っているでしょう。しかし、「カレー専用米」、「寿司専用米」、「リゾット専用米」が品種改良によって登場していることはご存知でしょうか。 カレー専用の米「華麗舞」…

なぜ多くの人々が料理の写真を撮って共有するのか?

以前のエントリーで、以下のような記事を書きました。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2015/03/19/214336" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2015/03/19/214336">レストランでの料理の写真撮影は、なぜ問題なのか? - 夜食日記</a> レストランでの写真は、TPOでしょう。 写真を撮るのは、食べると消えてなくなる料理を記念に残したいという気持ちもあるでしょうが、Twit…

現代フランス料理科学事典

ご恵贈いただきました。 現代フランス料理科学事典 (栄養士テキストシリーズ) 作者: ティエリー・マルクス,ラファエル・オーモン,的場輝佳,八木尚子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/03/21 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見…

レストランでの料理の写真撮影は、なぜ問題なのか?

レストランなどでの外食時に、料理の写真を撮る人を以前よりもよく見かけるようになりました。 レストランでの写真撮影に対して、私はほとんど気にならないものの、全く気にならないわけでもないという感じです。レストランの種類などによってもケースバイケ…

焼き芋はどこまで甘くなるのか?―低温加熱による限界への挑戦

スーパーの入口付近などで「焼き芋」が売られているのをよく目にしますが、今巷でちょっとした「焼き芋ブーム」なのだそうです。私も買いたいと思う時に限って、だいたい売れ切れています。 サツマイモは、「蒸し芋」よりも「石焼き芋」にした方がおいしいの…

絶望と希望と願望と宿命―4年目の3.11に思うこと

東日本大震災から4年。3.11後の混乱期に大学に入学してきた新入生が、来週卒業式を迎えます。あの年の講義開始は1ヶ月遅れ、入学式は約半年後の9月末でした。 絶望と希望は表と裏 人が絶望の淵に立たされた時、そこから生きていくためには、希望が必要…

「パスタのゆで方 大実験!」@dancyu

先日、『dancyu』の最新号を送って頂きました。 dancyu(ダンチュウ) 2015年 04 月号 出版社/メーカー: プレジデント社 発売日: 2015/03/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 巻頭の特集はパスタ。春が近づいてくると、私も「パスタララララン♪」っ…

おいしさの理想―食の「真・善・美」

おいしい料理に興味を抱く人は、たくさんいることでしょう。 おいしさは美味しさ、すなわち「美しい味」と書きますが、文学、美術、音楽などの美が大学で扱われているのに対し、食の美についてはまだしっかりと体系化されて扱われていないのが現状です。 人…

新印象派の科学への接近と解放―総合芸術としての料理の未来

先日、東京都美術館で行われている「新印象派―光と色のドラマ Neo-Impressionism, from Light to Color」を観ました。 新印象派 光と色のドラマ 見どころより一部抜粋。 印象派は、揺れる水面や陽光のうつろいなど、自らの目に映る世界を描き出そうとし、そ…

料理と芸術のおいしい出会い

私たちは、なぜおいしい料理に魅了されるのでしょうか? たとえば、レストランでの食事はとても魅力的です。整然と並べられ食器、調和のとれた場の雰囲気。テーブルは明るく照らし出され、洗練されたサービスによって鮮やかに盛りつけられた料理が運ばれてき…

ビートたけしさんと対談しました

本日発売の『新潮45』に、対談記事を掲載して頂きました。 新潮45 2015年 03 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/02/18 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る

トランスグルタミナーゼによる「しらすバーガー」の創作

食品成分を“つなぎ合わせる”酵素の一つに、「トランスグルタミナーゼ」というものがあります。 以前、このブログでも紹介しました。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2013/09/03/215737" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2013/09/03/215737">多彩な“食感”を生み出す「トランスグルタミナーゼ」の分子ガストロノミーへの応用 - 夜食日記</a> トランスグルタミナーゼを使…

なぜホット・アイスクリームは高温で固まり、低温で溶けるのか?

一連の“ホット・アイスクリーム”のエントリーのつづき。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/21/230554" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/21/230554">“ホット・アイスクリーム” 温めると固まり、冷やすと溶ける - 夜食日記</a>

もうすぐ本が出ます。『「もしも」に備える食』

管理栄養士、食育指導士、防災食アドバイザーの今泉マユ子さんと共著で『「もしも」に備える食 災害時でも、いつもの食事を』という本を出すことになりました。 「もしも」に備える食 災害時でも、いつもの食事を 作者: 石川伸一,今泉マユ子 出版社/メーカー…

「節約遺伝子仮説」vs.「料理仮説」

以前読んだ本で、おもしろいなと思ったこと。 火の賜物―ヒトは料理で進化した 作者: リチャード・ランガム,依田卓巳 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2010/03/26 メディア: 単行本 購入: 6人 クリック: 62回 この商品を含むブログ (17件) を見る …

月刊『化学』に寄稿しました

もうすぐ発売になる化学同人さんの月刊『化学』2015年2月号に、解説記事を寄稿させていただきました。 タイトルは、「夢の卵"デザイナーエッグ"を目指して ──個人の体質に合わせたテーラーメイド食品の開発」というものです。 <a href="http://www.kagakudojin.co.jp/book/b193052.html" data-mce-href="http://www.kagakudojin.co.jp/book/b193052.html">月刊化学 2015年2月号 - 株式会</a>…

「分子調理」のおいしい世界 第3回 @応用物理

応用物理学会の機関誌『応用物理』において、『「分子調理」のおいしい世界』の第三弾を掲載して頂きました。 ノーベル賞受賞式・晩餐会に同行された先生の臨場感のたっぷりの報告がとても興味深いものでした。 もう一つ、ノーベル賞受賞に際しての応用物理…

『Vesta(ヴェスタ)』に寄稿しました

食文化誌『Vesta』の最新号の第97号(2015年1月10日発売)に、記事を掲載して頂きました。 Vesta (ヴェスタ) 2015年 02月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会 発売日: 2015/01/10 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 特集は『やわらかい食…

食の未来を考える意味

年のはじめは、新しい一年の目標やその先の「未来」を考えるのにいいタイミングです。将来や未来予測に関するTV番組やWebの記事もよく目にします。 人はこれまでさまざまな未来を想像してきました。突拍子もない空想レベルのものから、データに基づいた社会…

新しい料理を作るための“ゲル化”

国内外の前衛的なレストランでは、増粘剤などを使って、新しい食感を持つ料理が次々と開発されました。この増粘剤によるゲル化の役割は、液体の食材に粘りを増して形を保つことと、完全に固めることにあります。 増粘剤を使って、液体の周りをゼラチン質で覆…

“ホット・アイスクリーム”の作り方

材料 牛乳:1 カップ(200 g) 砂糖:10 g メチルセルロース:4 g バニラビーンズ:適量 卵黄:1個(コクを出す場合) 作り方 材料をすべて合わせる。 冷蔵庫で一晩寝かす。 生地をかき混ぜる。 電子レンジで加熱する。 好みの大きさに取り分ける。 だいた…

“ホット・アイスクリーム” 温めると固まり、冷やすと溶ける

念願だった“温かいアイスクリーム”「ホット・アイスクリーム」の試作品ができました。ネーミング的に、矛盾していますが…。 温度が、70℃超えの“アイスクリーム”です。 ババロアっぽいですがババロアではありません。 普通のアイスクリームは、冷たいうちは形…

「分子調理」のおいしい世界 第2回 @応用物理

応用物理学会の機関誌『応用物理』において、『「分子調理」のおいしい世界』の第二弾を掲載して頂きました。 第二回目の応用物理 第83巻 第12号 (2014)のタイトルタイトルは、『科学者が「料理」に出会うとき』というものです。科学者から見た料理の科学の…

ラーメンの“料理の式”とその式を変形した料理

前回のエントリーの続き。 &lt;a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/02/205518" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/02/205518"&gt;料理の見方を変える「料理の式」 - 夜食日記&lt;/a&gt; 料理の式の例として、“…

料理の見方を変える「料理の式」

フランスの物理化学者がエルヴィ・ティスが考案した「料理の式」。以下のふたつの要素を組み合わせることで、あらゆる料理が表現できるといっています。 要素その1(食材の状態) G(ガス):気体 W(ウォーター):液体 O(オイル):油脂 S(ソリッド):…

「知性」アプローチの限界と「感性」との融合

東日本大震災の直後の仙台で、ラジオしか情報入手方法がなかった頃。そのラジオから流れてきたある情報がいまも頭に残っています。 震災下、被災者を襲うストレスに対してどのように対処すべきかというアナウンサーの質問の答えとして、ある大学の先生が「ス…

「衣・食・住」の順番と「感性・知性」のバランス

「衣食住」という言葉。すなわち、衣服、食事、住居は、どれも私たちの生活に無くてはならないものですが、なぜこの順番なのかと常々思っていました。 人が生活していく上で不可欠な順に並べれば、やはり食べなくては生命活動が途絶えてしまうので、「食」が…

「食の科学」と「食の芸術」は、なぜ軽んじられるのか?

「食」は人にとってなくてはならないものですが、「食」の科学は、科学の世界の中で必ずしも重要な学問分野として捉えられていないように感じます。 「食品学」や「栄養学」を生業にしている私でも、「物理学」や「分子生物学」の方がより“ 高尚”に見えます…