夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

新しい料理を作るための“ゲル化”

国内外の前衛的なレストランでは、増粘剤などを使って、新しい食感を持つ料理が次々と開発されました。この増粘剤によるゲル化の役割は、液体の食材に粘りを増して形を保つことと、完全に固めることにあります。 増粘剤を使って、液体の周りをゼラチン質で覆…

“ホット・アイスクリーム”の作り方

材料 牛乳:1 カップ(200 g) 砂糖:10 g メチルセルロース:4 g バニラビーンズ:適量 卵黄:1個(コクを出す場合) 作り方 材料をすべて合わせる。 冷蔵庫で一晩寝かす。 生地をかき混ぜる。 電子レンジで加熱する。 好みの大きさに取り分ける。 だいた…

“ホット・アイスクリーム” 温めると固まり、冷やすと溶ける

念願だった“温かいアイスクリーム”「ホット・アイスクリーム」の試作品ができました。ネーミング的に、矛盾していますが…。 温度が、70℃超えの“アイスクリーム”です。 ババロアっぽいですがババロアではありません。 普通のアイスクリームは、冷たいうちは形…

「分子調理」のおいしい世界 第2回 @応用物理

応用物理学会の機関誌『応用物理』において、『「分子調理」のおいしい世界』の第二弾を掲載して頂きました。 第二回目の応用物理 第83巻 第12号 (2014)のタイトルタイトルは、『科学者が「料理」に出会うとき』というものです。科学者から見た料理の科学の…

ラーメンの“料理の式”とその式を変形した料理

前回のエントリーの続き。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/02/205518" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/02/205518">料理の見方を変える「料理の式」 - 夜食日記</a> 料理の式の例として、“…

料理の見方を変える「料理の式」

フランスの物理化学者がエルヴィ・ティスが考案した「料理の式」。以下のふたつの要素を組み合わせることで、あらゆる料理が表現できるといっています。 要素その1(食材の状態) G(ガス):気体 W(ウォーター):液体 O(オイル):油脂 S(ソリッド):…

「知性」アプローチの限界と「感性」との融合

東日本大震災の直後の仙台で、ラジオしか情報入手方法がなかった頃。そのラジオから流れてきたある情報がいまも頭に残っています。 震災下、被災者を襲うストレスに対してどのように対処すべきかというアナウンサーの質問の答えとして、ある大学の先生が「ス…

「衣・食・住」の順番と「感性・知性」のバランス

「衣食住」という言葉。すなわち、衣服、食事、住居は、どれも私たちの生活に無くてはならないものですが、なぜこの順番なのかと常々思っていました。 人が生活していく上で不可欠な順に並べれば、やはり食べなくては生命活動が途絶えてしまうので、「食」が…

「食の科学」と「食の芸術」は、なぜ軽んじられるのか?

「食」は人にとってなくてはならないものですが、「食」の科学は、科学の世界の中で必ずしも重要な学問分野として捉えられていないように感じます。 「食品学」や「栄養学」を生業にしている私でも、「物理学」や「分子生物学」の方がより“ 高尚”に見えます…

“真のおいしさ”を理解するには? 「知性食い」と「感性食い」

「料理と科学のおいしい出会い」という本を書き、料理のおいしさを科学の面から迫りましたが、執筆している最中、私の頭の片隅である声が絶えず聞こえていました。 「科学だけで、おいしさがわかると思うなよ。」 料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食…

『応用物理』で「分子調理」の連載が始まりました

応用物理学会の機関誌『応用物理』において、「分子調理」に関する記事の連載をしていただけることになりました。 大変ありがたいことです。 第一回目の応用物理 第83巻 第11号 (2014)のタイトルは、「分子調理って何?」というもの。 内容は、杏仁豆腐並に…

「ソーセージは餃子のように焼け!」@dancyu

今日、dancyu編集部のSさんから、最新号のdancyuが送られてきました。dancyu (ダンチュウ) 2014年 12月号出版社/メーカー: プレジデント社発売日: 2014/11/06メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 特集の一つである下の記事の内容に関して事前に…

塩レモンがおいしくて、塩ブドウがおいしくない理由

前回のエントリーで紹介した自家製「塩ブドウ」。 塩レモンブームに乗って、「塩ブドウ」を作ってみたら… - 夜食日記 あまりの“おいしくなさ具合”にその理由を考えたくなりました。 そもそも、多めの塩と果物との相性がいい食品の例といえば、ブームとなって…

塩レモンブームに乗って、「塩ブドウ」を作ってみたら…

今年、万能調味料として大ブームを巻き起こしている、塩レモン。塩レモン関係のレシピ本を本屋でたくさん見かけます。 さらに、そのブームに乗って現在、塩トマトや塩たまねぎなど“塩◯◯”シリーズが続々と登場しているようです。 秋は果物の一番おいしい季節…

発見はどこから来るかわからない。クラゲとセレンディピティ

多くの人の心の琴線に触れる物語の定番といえば、主人公が「どん底から立ち上がる」という話でしょう。リアルの世界で、そんなストーリーを見させてもらいました。山形県にある鶴岡市立加茂水族館のクラゲにまつわる物語です。 昨日、その加茂水族館に行って…

卵のジャーキーはなぜないのか? “エッグ・ジャーキー”の開発

大学1年生の少人数教育の演習科目で行った、あるお試し実験から。 <イントロダクション> 「ビーフ・ジャーキーはあるのに、なぜエッグ・ジャーキーはないのか?」という卵研究者(私)の永遠の命題!?を解決するために、実際に「エッグ・ジャーキー egg …

箸やフォークはここまで来た! カトラリーに迫るハイテク化の流れ

「メガネ」や「腕時計」のウェアラブルコンピュータ化が進んでいますが、「食」の分野でも、さまざまなハイテク化を目にするようになりました。 料理を口に運ぶ箸やフォークなどのカトラリーに忍び寄る「高機能化」の例を3つピックアップします。 食事のス…

メイプル・パール Maple Pearls

先月のカナダ・モントリオール学会の際、市内のメイプルシロップ屋で買った「メイプル・パール」。 前に書いた「オリーブオイル・キャビア」と同じように作られているでしょう。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2013/10/08/235818" data-m…

23歳が開発した食品の新鮮さを見分ける「生体反応性ラベル」とは?

スーパーで買って冷蔵庫に数日置いてしまった肉を食べようかどうか迷った末、もったいないけど捨ててしまった経験がある方もいることでしょう。 世界全体で人の消費向けに生産された食料のおおよそ3分の1、量にして年間約13億トンが捨てられていると言われ…

「清流」10月号に記事が載りました

清流出版さんの月刊誌「清流」の10月号において、「震災食」に関する記事を特別企画として取り上げて頂きました。 事前に研究室までお越しいただいて、大変丁寧に取材して頂きました。雑誌全体を拝見しても、多くの方に丹念に取材し、誠実に作られている雑誌…

NHK「視点・論点」に出ました

今日のNHK「視点・論点」に出演させて頂きました。以下、詳細です。 番組名:視点・論点テーマ:おいしさと科学出演者:宮城大学准教授 石川伸一放送日:9月16日(火) NHK総合 4:20〜4:30 NHK教育 13:50〜14:00ブログ:http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-bl…

「芸術的に見せた料理はおいしい!?」という研究

グルメサイトで行きたい店を選ぶときや、レストランで写真付きのメニューを見て注文するとき、さらにコンビニやスーパーで食べものを選ぶときなど、私たちは基本的に眼で見た情報を頼りにお店や料理、食べものを選んでいます。 料理を口にする前には、食品の…

備蓄をする人は5割が限界? その背景にある「備蓄の壁」とは

昨日とおととい、仙台市消防局に行ってきました。 仙台市危機管理室減災推進課が主催する「地域地震防災アドバイザー研修会」で講演するためです。「大震災を生き抜くための食事学」という本を出していたこともあり、「震災と食」に関する講話の依頼を頂いて…

食は人の身体と心に影響を与える最大のシグナルである

先日、カナダから帰国しました。IUFoST(International Union of Food Science & Technology)が主催する国際学会で、フードサイエンスに関する最新の研究やさまざまな知見に触れて来ました。 学会プレジデントのPingfan Rao氏が、オープニングセレモニーで…

メルト化する世界、モザイク化する世界

IUFoST(International Union of Food Science & Technology)という食品科学技術に関する国際学会に出席するため、カナダのモントリオールに来ています。専門知識の波を浴び、普段働かない脳の部分が活性化している気がします。 専門が融合する 食品学と栄…

経験によって得られるもの、失われるもの

出張でカナダに来ています。8年前に2年ほど研究留学で生活していた国です。留学以来の渡加です。 あえて昔の馴染みのスーパーで売られているパックの寿司を食べましたが、いろいろな意味で“普通”でした。 以前、海外で安いsushiを食べると、日本の寿司との…

「ターミナル・メシ」で国の食欲を探る

お盆で民族大移動のこの時期、私も昨日は実家に墓参りに行きました。高速の渋滞に見事はまりました。 今、帰省や旅行などで空港や駅にいて、そこで食事を取られている方も多いことでしょう。 空港とくに国際空港内での食事は、その国の現代の食文化を表す象…

名誉教授曰わく「ボケは生活習慣病かもしれない」

先日、名誉教授の先生とお酒を飲みました。私を「食」の教育研究へと導いてくれた恩師の先生です。年に何度かお酒をご一緒する機会を頂いています。 「試験の採点が終わった頃でも、夜食くん、ビールでもどう?」とお誘いを受けていました。先週末に、採点業…

「平均のおいしさ」の発見と再現ができる人

セブンイレブンの野菜スティックにつける味噌マヨネーズに、地味にはまっています。仕事中よくポリポリポリポリ食べて、いつの間にか無くなっていることがよくあります。 他のコンビニの野菜スティックも試してみましたが、セブンの味噌マヨのおいしさはちょ…

Q. スイカって野菜なんですか、果物なんですか? はっきりして下さい!

A. “園芸”的には野菜、“食品”的には果物ですかね。世の中、はっきりしないことも多いのです。 私が担当している食品学の講義で、「野菜と果物」の回に決まって聞かれる質問です。 農学系の学科と食品系の学科、両方の学生に教えているのですが、スイカやメロ…

“頑固オヤジ”はこうして作られる 〜体と頭の省エネ化の先〜

二十歳前後の学生を見ていると、体のエネルギー利用効率が悪いなと感じます。昼ごはんきちんと食べたであろうはずのに、4限目の授業で講義室にどんよりと漂う「もう、お腹すいた」という空気感。 自分が学生の頃を思い出してみても、ごはんを食べる度に汗が…

微妙に変化し続ける老舗の商品

先日、私担当の大学院の講義の中で、ある資料に書かれていた『老舗』という言葉を院生が「ろうほ?」と読んでいて、「“しにせ”って読むんだよ」というやりとりがありました。完全な当て字なので、読みにくい漢字ではあります。 私も20代前半ぐらいまで「手…

Q. 栄養を摂るために食べるのに、吸収を抑えるトクホってなんか矛盾してません?

私の講義での学生からの質問。 A. 食べることに多くの役割を求めるのが、人間です。 脂質や糖質の吸収を抑える特定保健用食品(トクホ)や健康食品がたくさん上市されています。「食べるのをガマンしない」といった謳い文句とともに。 そもそも人は何のため…

ワールドカップ・キュイジーヌ

2014 FIFAワールドカップのブラジル大会が、決勝戦「ドイツvs.アルゼンチン」の一試合を残すのみとなりました。時差の関係もあって今回、日本戦も含めてほとんど試合は見れていませんが、世界一のスポーツイベントの盛り上がりは感じています。 出場国の独特…

「安心マニュアルが欲しい」と「信じたくないものは信じない」

災害時の食事について聞かれることがよくあります。先日もある方とそんな話になりました。「どんなものを、どれだけ準備したらいいですか?」といった質問です。 具体的な食品の種類を尋ねられ、毎回、お話していく過程で感じるのは、「何を準備すれば、私の…

エル・ブリのフェラン・アドリアに関する書籍等4点

先月出版された『料理と科学のおいしい出会い』に関する参考図書などをシリーズで紹介します。 最初は、第1章の「料理と科学」の出会いの歴史から、『エル・ブリ』のフェラン・アドリア氏に関するものから。 1. エル・ブリ 想像もつかない味 一つ目は、2002…

『グミケーキ』のトラウマ

米原万里さんの「旅行者の朝食」を読んでいたら、『トルコ蜜飴』という単語が出てきて、おもわず心が乱されました。 「なんておいしそうな名前なんだ。どんな色や形をしているのかわからないが、食べてみたい!」 そんな感覚にさせてくれる、おいしいネーミ…

アイスクリームの分子構造 〜分子調理によるアイスクリームの未来〜

前回、前々回からの続き。 乳脂肪分の多い濃厚なプレミアムアイスクリームのおいしさのひとつは、そのクリーミーな舌触りですが、そのアイスクリームを顕微鏡等を使って分子レベルで見ると、アイスクリームの中の氷の結晶が小さいことがわかります。 アイス…

アイスクリームの分子構造 〜アイスクリームの“柱”とは?〜

前回からの続き。 アイスクリームは、見方を変えるとミックスの中に空気を抱き込んだ「泡」であるといえます。さらに、ミックスは脂溶性分子と水溶性分子が混ざり合った「エマルション」でもあります。つまり、アイスクリームの構造には、メレンゲ菓子やマヨ…

アイスクリームの分子構造 〜“間隙”のおいしさ〜

アイスクリームは年中美味しいですが、最近特においしい季節になってきました。 アイスクリームのおいしさは、なんといってもその「舌触り」が重要です。とろける「滑らかさ」は、アイスクリームに欠かせない魅力の一つです。 そのカギを握っているのが、ア…

W杯で勝ち抜くための食事学

ブラジルでのサッカー・ワールドカップの開幕が近づくにつれて、4年前の南アフリカ大会時に書いた私のブログ記事「W杯日本代表、躍進の食事」にアクセスが増えているようです。4年に一度のこの時期、「W杯と食」について思いを巡らすのもいいでしょう。 サ…

新食品への恐怖と興味の背景にあるもの〜食品心理学の視点から〜

今日は虫の日でした。今日の講義の終わり頃に、前のブログ記事のような話をちょっとしました。そうしたら、学生に講義の終わりに毎回書いてもらっているコメント票の一つに「虫が気持ち悪すぎて、今日の講義がどんな内容だったか忘れるくらい強烈なイメージ…

コオロギでだしを取る@世界のベストレストラン

6月に入りました。6月といえば、あさって6月4日は、虫の日ですね。 昨年、国連食糧農業機関(FAO)が昆虫食を推奨する報告書を発表し、多方面で話題となりました*1。 今年に入っても、ハーバード大学の卒業生、女性3名が「コオロギチップス」を考案し*2…

分子ガストロノミーの登場、分子調理の行方

編集者さんから見本本が送られてきました。うれしさのせいなのか、それとも暑させいなのか、顔のテカリが五割ほど増しています。 裏面。↓ 編集者さんによるコピー等が、帯の鮮やかなピンクのバックに浮かんでいます。 背表紙には「分子ガストロノミーの登場…

英国人が書いたこの本は「和食のバイブル」になるのではないか?

『英国一家、日本を食べる』という本の感想を以前書きましたが*1、その第二弾の『英国一家、ますます日本を食べる』、先ほど一気に読み終えました。 英国一家、ますます日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ) 作者: マイケル・ブース,寺西の…

美しいものがおいしいのではなく、おいしいものが美しい。

サイエンスにおいて、しばしば美しい形に出会うことがあります。顕微鏡で覗いたミクロの造形に心奪われ、夢中になって観察することがあります。しかし、それは決して意図したものではなく、あくまで結果としての美です。 美が、研究を推進する動機となること…

「ヒトの肉を培養して食べる」ということ

見つけてから1ヶ月以上、ずっとモヤモヤしていたニュース。 WIRED.jpから(抜粋)。 恐竜もセレブも、人造肉にして食べてしまうレシピ:ギャラリー 透明な肉や、セレブの幹細胞を培養した肉など、培養された人造肉の可能性を追求する「レシピ本」を紹介。 …

分子調理=分子調理“学”×分子調理“法”

前のブログでも書きましたが、エルヴェ・ティス氏は「分子ガストロノミーは技術ではなく科学である」と定義しています。分子ガストロノミーといえば、斬新な料理のイメージを抱かれる方も多いかと思いますが、創設者は目新しい料理に分子ガストロノミーとい…

分子ガストロノミーは死んだ!?  その発展を阻んだものとは?

先日ご紹介した「料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える」という本の説明がごちら。 内容説明 近年、物理学、化学、生物学、工学の知識を調理のプロセスに取り込み、これまでにない新しい料理を創造しようとする「分子調理」が注目されて…

「料理と科学のおいしい出会い」という本が出ます。

自然科学分野の書籍を発行している化学同人さんから「料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える」という本が出ることになりました。 化学同人さんのサイトでもこれから出る本として掲載されています。 表紙は、これからです。 料理と科学のお…