夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

食の科学

「料理は科学ですね」

さっき見ていたNHKの連続テレビ小説の「ごちそうさん」で、主人公のめ以子(杏さん)が、スコッチエッグの熱伝導を話す下宿生の悠太郎に「料理は科学ですね」といっていました。 科学を知っていると料理は格段においしくなりますが、科学は料理のおいしさの…

スペインの生ハム「ハモン・イベリコ」の食品比較論と分子美味論

スペインの生ハムの塊が「イスラム教徒への“踏み絵”」に見えた話を前のブログで書きましたが、書いた後「スペイン料理」のWikipediaを見たら*1、異教徒への“踏み絵的料理”って結構あることがわかりました。 人の精神と肉体に大きな割合を占める「宗教と料理…

もう一つの「招致活動」の成功

昨日、スペインから帰国しました。いい刺激をたくさん受けて来ました。 また、夜な夜なおいしいものをたくさん食べ過ぎて、胃がやや“筋肉痛”です。 今回参加した国際栄養学会議(International Congress of Nutrition、ICN)は、国際栄養科学連合(Internati…

栄養“知識”過剰摂取の幸福感@国際栄養学会

国際栄養学会で“栄養知識”の洪水を浴びています。 朝8時から19時まで約8つのシンポジウムが同時並行で行われ、タイトなスケジュールの運行がほぼ1週間続きます。 国際学会では出来るだけ俯瞰的な知識を得るため、自分の専門以外のセッションも積極的に聞こう…

「国際栄養学会」で出された昼食とは?

国際栄養科学連合(International Union of Nutritional Sciences、IUNS)が4年に一度開催する第20回国際栄養学会(20th International Congress of Nutrition)に参加するため、スペインのアンダルシア地方にあるグラナダに来ています。 学会場のGranada Co…

多彩な“食感”を生み出す「トランスグルタミナーゼ」の分子ガストロノミーへの応用

食品のおいしさを増強させる反応に「熟成」があります。味噌や醤油、ワインやウィスキー、食肉や魚肉などを、適切な状態で適切な時間寝かせることによって、「おあずけ」されただけのことはあるおいしさを手に入れることができます。 熟成の反応は、基本的に…

「“試験管培養肉”ハンバーガー」の登場は、“食料生産新時代”の幕開けか?

先月はじめ、試験管でウシの細胞を培養してつくられた“試験管培養牛肉”を使ったビーフバーガーが調理、試食されるというニュースがありました。 (画像:CNN.co.jpより) オランダのマーストリヒト大学の生理学者マルク・ポスト教授らが、ウシの幹細胞を培養…

果物の一番甘い部分はどこなのか?

夏の終わりが近づいて来ました。 湿度が低下し、空気が次第にクリアーになっているのが、通勤時に見る木々の緑色と空の青色の「彩度」から感じます。 真夏の暑い時期、汗をたっぷりかいた後にいただいた冷え冷えのスイカやモモなどのみずみずしいおいしさは…

“Umamiバーガー”から考える「うま味」の存在意義

前回の「うま味」のブログ記事*1に関連したネタを一つ。 「Umamiバーガー」ってなに? 現在、マクドナルドで「クォーターパウンダー」の数量限定「¥1,000バーガー」キャンペーン*2が行われていますが、CMからはおいしさ感がにじみ出ていますね。 バーガーの…

昆布と椎茸の“合わせだし”が最強の理由 うま味「相乗効果」の分子メカニズム

私が「卵」の研究者だからかも知れませんが、「茶碗蒸し好き」と公言する方に、かなり会ってきた気がします。 フタを開けると立ち上がる上品な香り、つるりとした食感、そして日本人の遺伝子に組み込まれたほっとする「ダシ」への安心感などが、満腹でも茶碗…

あなたに“究極に合う”食を提供する「3Dフードプリンタ」のアナザ・インパクト

3Dプリンタの食品版「3Dフードプリンタ」は、ユニークな形のお菓子が作れるだけではなく、「誰でも、どこでも、食感のある“食事”を自動的に作ることができる」可能性があることを前のブログで書きました*1。 そのため将来、3Dフードプリンタは「究極の調理機…

「テーラーメイド食品」のインパクト 遺伝子で食をオーダーメイド@月刊「事業構想」

「事業構想大学院大学」*1という大学院大学をご存知でしょうか。 昨年2012年4月に、東京・表参道で開学したばかりの、事業アイデア立案から実現までの過程を指す「事業構想」を学ぶ専門職大学院です。 学長の野田一夫さんは、私の現在の所属機関である…

シェフは将来、心理学や脳科学が“必修”になる?

昼食がよくパン派かごはん派かに分かれるように、朝はトーストと目玉焼きとか、卵かけごはんなどの定番の食事になる人が多いでしょう。 一般的に家で食べる食事は、いつもの食事を求めがちなのに対し、たまに外食する場合などは、普段とは変わったものが食べ…

舌から脳までの“おいしさ情報”の「伝言ゲーム」

料理を食べて「おいしいっ!」と感じるプロセスは、食べものの「情報」を脳に伝える「伝言ゲーム」のようなものです。 例えば、味覚では、食べものの中に含まれる「味分子」が、舌の味蕾にある味細胞の表面にある「味覚受容体」にくっつきます。 受容体に味…

“おいしさ”は料理の中ではなく、脳の中にある

先日、久しぶりに外で焼肉を食べました。パワーを得たい時は、やはり肉ですね。 炭火で肉を焼く際、網の上で焼かれる音、肉の焼き目、立ち上る香り、そして食べた時に肉からほとばしる肉汁の風味やとろける食感によって「おいしさ」を感じます。 おいしい料…

タバコ、シイタケ、シナモンのにおい

ブログを「はてなダイアリー」から「はてなブログ」に引っ越しましたが、現実世界でも引っ越しました。 東日本大震災でイレギュラーの引っ越しが2年前にあり、丸2年目の更新時に、別の家つまり現在の家に引っ越しました。約半月前のことです。 私の住んで…

タマゴ科学研究会と第一回タマゴシンポジウム

私にとって、念願の研究会が誕生しました。その名は、タマゴ科学研究会。タマゴは、主に「鶏の卵」のことで、私のメインの研究対象です。 その記念すべき初回のシンポジウムが先週開催され、参加させて頂きました。 第1回 タマゴシンポジウム テーマ:タマ…

史上最大の“炒飯”大実験

最近は、料理好きな男子もまったく珍しくなくなりましたね。勤務先の大学にも「料理男子」たちがたくさんいます。元「料理“男子”」だった私もこの時代の好ましい変化に感慨深いものがあります。 本屋に行くと、そんな料理男子向けの雑誌がたくさん並べられて…

ストレス時、女性は「過食」に、男性は「絶食」に向かう?

今日の大学1年生向けの少人数授業での話をひとつ。 「おいしさと食品開発」というテーマで、全7回の話をしていますが、今日のテーマは「おいしさの心理学」について、以前このブログでも紹介した「味わいの認知科学」という本のあるセクションについてディ…

「食」の20年度、30年後の未来予想

今年もあっという間に「仕事納め」の12月28日。“おさまっていない”仕事が多々ありますが、いちおう「ひと区切り」の日となりました。 年末年始は、「これまでの1年」そして「これからの1年」を考えるきっかけを与えてくれる時期です。 2012年。私は、初め…

「遺伝子検査」とセットで“販売”しなければならないもの

DHCさんの「遺伝子検査 ダイエット対策キット」を実際に試してみました。 ほおの内側の口腔粘膜を送ってから数週間後、「肥満関連遺伝子 検査結果報告書」が届きました。 「肥満関連遺伝子」って何? 肥満関連遺伝子として一番有名なのは、脂肪の分解や燃焼…

山中教授の「iPS細胞」から考える「食事療法の将来」

山中伸弥教授が人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発に関するノーベル医学生理学賞を受賞して、はや1ヶ月弱が経ちました。 ヒートアップしていた報道がだいぶ落ち着いたようですので、“食品研究者的”に思うところを書いてみたいと思います。 以前、再生医療に…

「オトナの研究者」が「オトナの食品」を食べる時

10月も、はや最終週となりました。今月、Twitterの「ツイートまとめ(はてなブックマーク経由)」の記事はありましたが、今月最初のブログです。 10月から大学の後期がスタートし、大学祭など、もろもろのイベントが目白押しでした。山中教授のノーベル…

ヘストン・ブルメンタールの「料理と科学」 科学実験好きな料理人

科学的な調理法を使う料理人として、「エル・ブリ」のフェラン・アドリアと同様に有名なのが、ヘストン・ブルメンタールでしょう。 ヘストン・ブルメンタールはイギリス生まれで、ロンドン西部のバークシャーにあるレストラン「ファット・ダック」のシェフで…

エルヴェ・ティスの「料理と科学」 料理が好き過ぎた物理化学者

エルヴェ・ティスは、パリにあるフランス国立農業研究所の研究者で、調理のプロセスにおける物理化学的な研究で知られています。 私が、彼を初めて知ったのは、『フランス料理の「なぜ」に答える』という本でした。 ティスが著者であるその本の帯には、 料理…

フェラン・アドリアの「料理と科学」 “斬新”を作るための“科学的”技術

私は、 料理(Cooking) 科学(Science) 芸術(Art) の“3つ輪”が交わる「融合領域」に強い関心があります。 スペインのシェフ、フェラン・アドリアの料理は、そのうち「料理」と「芸術」の2つの輪が大きく重なって見えます。しかし、「科学」の“輪っか”…

「料理と科学」を考える上での3人

料理と科学の「接近」を考える上で、以下の3人から考えてみたいと思います。 フェラン・アドリア エルヴェ・ティス ヘストン・ブルメンタール フェラン・アドリア Ferran Adriàは、スペインのレストラン「エル・ブジ El Bulli」のシェフ。 エルヴェ・ティス…

サイエンス&カルチャー地域住民セミナー 健康を支える食生活の「安心・安全」

宮城大学地域連携センターでは、地域の方と一緒に食生活の安心・安全について考える地域住民セミナーを今年8月から隔週土曜日(全8回)で開催しています。 講師は宮城大学の食産業学部の先生で、昨日の第4回目を私が担当しました。 ・セミナープログラム …

虫の眼、鳥の眼、亀の眼、カメレオンの眼

私はふだん眼鏡をかけているのですが、その眼鏡の鼻あての部分が壊れてしまい、先日、新調しました。今の眼鏡は、軽量化が進んでいますね。掛け心地がとてもいいです。 眼鏡を変えてもあまり気付かれないことに、一抹のさみしさを感じる今日この頃です。 と…

IUFoST 第16回食品科学技術世界会議@ブラジル

国際食品科学技術連合(International Union of Food Science and Technology、略称IUFoST)という食品科学と食品技術に関する世界的な科学機関があります。70カ国以上から20万人以上の食品科学者や食品技術者を代表する非営利団体です。 IUFoSTは、2年おき…