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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「なぜ凍結卵は固まるのか」から「次の凍結卵の可能性」まで

昨年からブームとなっている「凍結卵」。だいぶ市民権を得てきた印象を受けます。さらに、凍結卵で「卵黄のお刺身」など新ジャンルの料理の開発も進み、凍結卵の世界はまだまだ大きな広がりを見せそうな勢いです。 もともと、卵黄が固まるゲル化という現象は…

お腹にいる“下宿人”が気になる

人の願望はいろいろありますが、「健康」は古今東西を問わず、普遍的に切望されているもののひとつでしょう。とくに健康が損なわれてしまった場合はなおさらです。 私たちの普段の生活で、その健康に関係する二大ファクターといえば、「食事」と「運動」でし…

カレー「専用米」の登場―料理のゴールを考えた『料理育種』

私たちが主食としている「一般米」と日本酒用の「酒米」の品種が違うことは多くの人が知っているでしょう。しかし、「カレー専用米」、「寿司専用米」、「リゾット専用米」が品種改良によって登場していることはご存知でしょうか。 カレー専用の米「華麗舞」…

焼き芋はどこまで甘くなるのか?―低温加熱による限界への挑戦

スーパーの入口付近などで「焼き芋」が売られているのをよく目にしますが、今巷でちょっとした「焼き芋ブーム」なのだそうです。私も買いたいと思う時に限って、だいたい売れ切れています。 サツマイモは、「蒸し芋」よりも「石焼き芋」にした方がおいしいの…

なぜホット・アイスクリームは高温で固まり、低温で溶けるのか?

一連の“ホット・アイスクリーム”のエントリーのつづき。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/21/230554" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/21/230554">“ホット・アイスクリーム” 温めると固まり、冷やすと溶ける - 夜食日記</a>

月刊『化学』に寄稿しました

もうすぐ発売になる化学同人さんの月刊『化学』2015年2月号に、解説記事を寄稿させていただきました。 タイトルは、「夢の卵"デザイナーエッグ"を目指して ──個人の体質に合わせたテーラーメイド食品の開発」というものです。 <a href="http://www.kagakudojin.co.jp/book/b193052.html" data-mce-href="http://www.kagakudojin.co.jp/book/b193052.html">月刊化学 2015年2月号 - 株式会</a>…

料理の見方を変える「料理の式」

フランスの物理化学者がエルヴィ・ティスが考案した「料理の式」。以下のふたつの要素を組み合わせることで、あらゆる料理が表現できるといっています。 要素その1(食材の状態) G(ガス):気体 W(ウォーター):液体 O(オイル):油脂 S(ソリッド):…

「知性」アプローチの限界と「感性」との融合

東日本大震災の直後の仙台で、ラジオしか情報入手方法がなかった頃。そのラジオから流れてきたある情報がいまも頭に残っています。 震災下、被災者を襲うストレスに対してどのように対処すべきかというアナウンサーの質問の答えとして、ある大学の先生が「ス…

「衣・食・住」の順番と「感性・知性」のバランス

「衣食住」という言葉。すなわち、衣服、食事、住居は、どれも私たちの生活に無くてはならないものですが、なぜこの順番なのかと常々思っていました。 人が生活していく上で不可欠な順に並べれば、やはり食べなくては生命活動が途絶えてしまうので、「食」が…

「食の科学」と「食の芸術」は、なぜ軽んじられるのか?

「食」は人にとってなくてはならないものですが、「食」の科学は、科学の世界の中で必ずしも重要な学問分野として捉えられていないように感じます。 「食品学」や「栄養学」を生業にしている私でも、「物理学」や「分子生物学」の方がより“ 高尚”に見えます…

“真のおいしさ”を理解するには? 「知性食い」と「感性食い」

「料理と科学のおいしい出会い」という本を書き、料理のおいしさを科学の面から迫りましたが、執筆している最中、私の頭の片隅である声が絶えず聞こえていました。 「科学だけで、おいしさがわかると思うなよ。」 料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食…

塩レモンがおいしくて、塩ブドウがおいしくない理由

前回のエントリーで紹介した自家製「塩ブドウ」。 塩レモンブームに乗って、「塩ブドウ」を作ってみたら… - 夜食日記 あまりの“おいしくなさ具合”にその理由を考えたくなりました。 そもそも、多めの塩と果物との相性がいい食品の例といえば、ブームとなって…

卵のジャーキーはなぜないのか? “エッグ・ジャーキー”の開発

大学1年生の少人数教育の演習科目で行った、あるお試し実験から。 <イントロダクション> 「ビーフ・ジャーキーはあるのに、なぜエッグ・ジャーキーはないのか?」という卵研究者(私)の永遠の命題!?を解決するために、実際に「エッグ・ジャーキー egg …

箸やフォークはここまで来た! カトラリーに迫るハイテク化の流れ

「メガネ」や「腕時計」のウェアラブルコンピュータ化が進んでいますが、「食」の分野でも、さまざまなハイテク化を目にするようになりました。 料理を口に運ぶ箸やフォークなどのカトラリーに忍び寄る「高機能化」の例を3つピックアップします。 食事のス…

「芸術的に見せた料理はおいしい!?」という研究

グルメサイトで行きたい店を選ぶときや、レストランで写真付きのメニューを見て注文するとき、さらにコンビニやスーパーで食べものを選ぶときなど、私たちは基本的に眼で見た情報を頼りにお店や料理、食べものを選んでいます。 料理を口にする前には、食品の…

食は人の身体と心に影響を与える最大のシグナルである

先日、カナダから帰国しました。IUFoST(International Union of Food Science & Technology)が主催する国際学会で、フードサイエンスに関する最新の研究やさまざまな知見に触れて来ました。 学会プレジデントのPingfan Rao氏が、オープニングセレモニーで…

メルト化する世界、モザイク化する世界

IUFoST(International Union of Food Science & Technology)という食品科学技術に関する国際学会に出席するため、カナダのモントリオールに来ています。専門知識の波を浴び、普段働かない脳の部分が活性化している気がします。 専門が融合する 食品学と栄…

アイスクリームの分子構造 〜分子調理によるアイスクリームの未来〜

前回、前々回からの続き。 乳脂肪分の多い濃厚なプレミアムアイスクリームのおいしさのひとつは、そのクリーミーな舌触りですが、そのアイスクリームを顕微鏡等を使って分子レベルで見ると、アイスクリームの中の氷の結晶が小さいことがわかります。 アイス…

アイスクリームの分子構造 〜アイスクリームの“柱”とは?〜

前回からの続き。 アイスクリームは、見方を変えるとミックスの中に空気を抱き込んだ「泡」であるといえます。さらに、ミックスは脂溶性分子と水溶性分子が混ざり合った「エマルション」でもあります。つまり、アイスクリームの構造には、メレンゲ菓子やマヨ…

アイスクリームの分子構造 〜“間隙”のおいしさ〜

アイスクリームは年中美味しいですが、最近特においしい季節になってきました。 アイスクリームのおいしさは、なんといってもその「舌触り」が重要です。とろける「滑らかさ」は、アイスクリームに欠かせない魅力の一つです。 そのカギを握っているのが、ア…

「ヒトの肉を培養して食べる」ということ

見つけてから1ヶ月以上、ずっとモヤモヤしていたニュース。 WIRED.jpから(抜粋)。 恐竜もセレブも、人造肉にして食べてしまうレシピ:ギャラリー 透明な肉や、セレブの幹細胞を培養した肉など、培養された人造肉の可能性を追求する「レシピ本」を紹介。 …

分子ガストロノミーは死んだ!?  その発展を阻んだものとは?

先日ご紹介した「料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える」という本の説明がごちら。 内容説明 近年、物理学、化学、生物学、工学の知識を調理のプロセスに取り込み、これまでにない新しい料理を創造しようとする「分子調理」が注目されて…

「料理と科学のおいしい出会い」という本が出ます。

自然科学分野の書籍を発行している化学同人さんから「料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える」という本が出ることになりました。 化学同人さんのサイトでもこれから出る本として掲載されています。 表紙は、これからです。 料理と科学のお…

肉の臭みを消す香辛料の作用は、“香水”と同じ?

昆布のとカツオ節による「うま味の相乗効果」のように、においにも「香りの相互作用」があることが次第に明らかになってきました。 たとえば、スパイスのクローブの特徴的な香気成分に「オイゲノール」という分子があります。オイゲノールがにおいの分子受容…

トウガラシの“ニセ熱さ”、ハッカの“ニセ冷たさ”

料理の温度に関係なく、食材の種類によってはそれを食べて熱く感じたり、冷たく感じたりするものがあります。東洋医学では、古くから体を温める“陽”の食材、体を冷やす“陰”の食材が知られています。 熱くさせるものといえばトウガラシで、冷たくさせるものに…

ニューロガストロノミーの可能性と限界

「神経の」または「神経学の」という英語の接頭辞が「ニューロ(neuro-)」ですが、このニューロが付いた言葉が絶賛“増殖中”です。 ニューロエコノミクス(neuroeconomic、神経経済学)、ニューロマーケティング(neuromarketing、神経マーケティング)、ニ…

人類史上、最も偉大な“食の発明”とは何か?

ちょうど一年前ぐらいに、英国の王立協会が発表したニュースから食の話題をひとつ。 わたしたち人類の歴史を振り返れば、ほとんど“飢え”との戦いの歴史でした。有史以来、「今日、食べることができるか?」が人の関心の中心にあったことでしょう。 現代の人…

フードペアリング仮説 「“科学的”食材組み合わせ」による新メニューの開発

よく「日本料理は“引き算”の料理、フランス料理は“足し算”の料理」といわれます。 日本料理は、余計な調理を極力省き、素材そのものの味を引き立たせることを優先させるのに対し、フランス料理は、多彩な食材を組み合わせ、深みのあるソースが味のベースにな…

「煮ても硬いタケノコがスプーンですくって食べられる」という技術

おととい、日本食品科学工学会の東北支部主催の市民フォーラムがあり、裏方で手伝いをしたのですが、興味深い話を耳にしてきました。 フォーラムのテーマは「介護食のユニバーサル化」という、高齢化社会に向けた食についてのお話でした。 高齢の方でなくて…

博士の愛した寿司 「“細胞”海苔巻き」

今週、自分の誕生日がありました。年齢は、ついに“大台”に。 当日、次のような“冊子”をプレゼントとして頂きました。 「SCIENCE-ish COOKING with YOUR WIFE」。サイエンス“風”の料理本のようです。 この『経本』を元に、「“細胞”の形をした海苔巻き」を作り…

「料理は科学ですね」

さっき見ていたNHKの連続テレビ小説の「ごちそうさん」で、主人公のめ以子(杏さん)が、スコッチエッグの熱伝導を話す下宿生の悠太郎に「料理は科学ですね」といっていました。 科学を知っていると料理は格段においしくなりますが、科学は料理のおいしさの…

スペインの生ハム「ハモン・イベリコ」の食品比較論と分子美味論

スペインの生ハムの塊が「イスラム教徒への“踏み絵”」に見えた話を前のブログで書きましたが、書いた後「スペイン料理」のWikipediaを見たら*1、異教徒への“踏み絵的料理”って結構あることがわかりました。 人の精神と肉体に大きな割合を占める「宗教と料理…

もう一つの「招致活動」の成功

昨日、スペインから帰国しました。いい刺激をたくさん受けて来ました。 また、夜な夜なおいしいものをたくさん食べ過ぎて、胃がやや“筋肉痛”です。 今回参加した国際栄養学会議(International Congress of Nutrition、ICN)は、国際栄養科学連合(Internati…

栄養“知識”過剰摂取の幸福感@国際栄養学会

国際栄養学会で“栄養知識”の洪水を浴びています。 朝8時から19時まで約8つのシンポジウムが同時並行で行われ、タイトなスケジュールの運行がほぼ1週間続きます。 国際学会では出来るだけ俯瞰的な知識を得るため、自分の専門以外のセッションも積極的に聞こう…

「国際栄養学会」で出された昼食とは?

国際栄養科学連合(International Union of Nutritional Sciences、IUNS)が4年に一度開催する第20回国際栄養学会(20th International Congress of Nutrition)に参加するため、スペインのアンダルシア地方にあるグラナダに来ています。 学会場のGranada Co…

多彩な“食感”を生み出す「トランスグルタミナーゼ」の分子ガストロノミーへの応用

食品のおいしさを増強させる反応に「熟成」があります。味噌や醤油、ワインやウィスキー、食肉や魚肉などを、適切な状態で適切な時間寝かせることによって、「おあずけ」されただけのことはあるおいしさを手に入れることができます。 熟成の反応は、基本的に…

「“試験管培養肉”ハンバーガー」の登場は、“食料生産新時代”の幕開けか?

先月はじめ、試験管でウシの細胞を培養してつくられた“試験管培養牛肉”を使ったビーフバーガーが調理、試食されるというニュースがありました。 (画像:CNN.co.jpより) オランダのマーストリヒト大学の生理学者マルク・ポスト教授らが、ウシの幹細胞を培養…

果物の一番甘い部分はどこなのか?

夏の終わりが近づいて来ました。 湿度が低下し、空気が次第にクリアーになっているのが、通勤時に見る木々の緑色と空の青色の「彩度」から感じます。 真夏の暑い時期、汗をたっぷりかいた後にいただいた冷え冷えのスイカやモモなどのみずみずしいおいしさは…

“Umamiバーガー”から考える「うま味」の存在意義

前回の「うま味」のブログ記事*1に関連したネタを一つ。 「Umamiバーガー」ってなに? 現在、マクドナルドで「クォーターパウンダー」の数量限定「¥1,000バーガー」キャンペーン*2が行われていますが、CMからはおいしさ感がにじみ出ていますね。 バーガーの…

昆布と椎茸の“合わせだし”が最強の理由 うま味「相乗効果」の分子メカニズム

私が「卵」の研究者だからかも知れませんが、「茶碗蒸し好き」と公言する方に、かなり会ってきた気がします。 フタを開けると立ち上がる上品な香り、つるりとした食感、そして日本人の遺伝子に組み込まれたほっとする「ダシ」への安心感などが、満腹でも茶碗…

あなたに“究極に合う”食を提供する「3Dフードプリンタ」のアナザ・インパクト

3Dプリンタの食品版「3Dフードプリンタ」は、ユニークな形のお菓子が作れるだけではなく、「誰でも、どこでも、食感のある“食事”を自動的に作ることができる」可能性があることを前のブログで書きました*1。 そのため将来、3Dフードプリンタは「究極の調理機…

「テーラーメイド食品」のインパクト 遺伝子で食をオーダーメイド@月刊「事業構想」

「事業構想大学院大学」*1という大学院大学をご存知でしょうか。 昨年2012年4月に、東京・表参道で開学したばかりの、事業アイデア立案から実現までの過程を指す「事業構想」を学ぶ専門職大学院です。 学長の野田一夫さんは、私の現在の所属機関である…

シェフは将来、心理学や脳科学が“必修”になる?

昼食がよくパン派かごはん派かに分かれるように、朝はトーストと目玉焼きとか、卵かけごはんなどの定番の食事になる人が多いでしょう。 一般的に家で食べる食事は、いつもの食事を求めがちなのに対し、たまに外食する場合などは、普段とは変わったものが食べ…

舌から脳までの“おいしさ情報”の「伝言ゲーム」

料理を食べて「おいしいっ!」と感じるプロセスは、食べものの「情報」を脳に伝える「伝言ゲーム」のようなものです。 例えば、味覚では、食べものの中に含まれる「味分子」が、舌の味蕾にある味細胞の表面にある「味覚受容体」にくっつきます。 受容体に味…

“おいしさ”は料理の中ではなく、脳の中にある

先日、久しぶりに外で焼肉を食べました。パワーを得たい時は、やはり肉ですね。 炭火で肉を焼く際、網の上で焼かれる音、肉の焼き目、立ち上る香り、そして食べた時に肉からほとばしる肉汁の風味やとろける食感によって「おいしさ」を感じます。 おいしい料…

タバコ、シイタケ、シナモンのにおい

ブログを「はてなダイアリー」から「はてなブログ」に引っ越しましたが、現実世界でも引っ越しました。 東日本大震災でイレギュラーの引っ越しが2年前にあり、丸2年目の更新時に、別の家つまり現在の家に引っ越しました。約半月前のことです。 私の住んで…

タマゴ科学研究会と第一回タマゴシンポジウム

私にとって、念願の研究会が誕生しました。その名は、タマゴ科学研究会。タマゴは、主に「鶏の卵」のことで、私のメインの研究対象です。 その記念すべき初回のシンポジウムが先週開催され、参加させて頂きました。 第1回 タマゴシンポジウム テーマ:タマ…

史上最大の“炒飯”大実験

最近は、料理好きな男子もまったく珍しくなくなりましたね。勤務先の大学にも「料理男子」たちがたくさんいます。元「料理“男子”」だった私もこの時代の好ましい変化に感慨深いものがあります。 本屋に行くと、そんな料理男子向けの雑誌がたくさん並べられて…

ストレス時、女性は「過食」に、男性は「絶食」に向かう?

今日の大学1年生向けの少人数授業での話をひとつ。 「おいしさと食品開発」というテーマで、全7回の話をしていますが、今日のテーマは「おいしさの心理学」について、以前このブログでも紹介した「味わいの認知科学」という本のあるセクションについてディ…

「食」の20年度、30年後の未来予想

今年もあっという間に「仕事納め」の12月28日。“おさまっていない”仕事が多々ありますが、いちおう「ひと区切り」の日となりました。 年末年始は、「これまでの1年」そして「これからの1年」を考えるきっかけを与えてくれる時期です。 2012年。私は、初め…