夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

食の心理

調理の“ロボット化”によって見えてくるもの

上海で『ラーメンロボット』が登場というニュースを見ました。 作っている動画を見ると、トッピングの乗せ方が、ちょっと残念です。↓ 日本で一世を風靡したラーメンロボット 元になっている技術は、日本の産業用機械メーカーの株式会社アイセイさんによるも…

フードペアリングとファッションの“奥深さ”にある共通点

先日、ある集まりで、以前アパレル関係、今は食品関係にお勤めの男性の方とお話する機会がありました。その話の中で興味深かったことを一つ。 その集まりの最初で、私が「フードペアリング仮説」について、ちらっとお話しました。 フードペアリング仮説とは…

レストランでの料理の写真撮影は、なぜ問題なのか?

レストランなどでの外食時に、料理の写真を撮る人を以前よりもよく見かけるようになりました。 レストランでの写真撮影に対して、私はほとんど気にならないものの、全く気にならないわけでもないという感じです。レストランの種類などによってもケースバイケ…

「知性」アプローチの限界と「感性」との融合

東日本大震災の直後の仙台で、ラジオしか情報入手方法がなかった頃。そのラジオから流れてきたある情報がいまも頭に残っています。 震災下、被災者を襲うストレスに対してどのように対処すべきかというアナウンサーの質問の答えとして、ある大学の先生が「ス…

「衣・食・住」の順番と「感性・知性」のバランス

「衣食住」という言葉。すなわち、衣服、食事、住居は、どれも私たちの生活に無くてはならないものですが、なぜこの順番なのかと常々思っていました。 人が生活していく上で不可欠な順に並べれば、やはり食べなくては生命活動が途絶えてしまうので、「食」が…

「食の科学」と「食の芸術」は、なぜ軽んじられるのか?

「食」は人にとってなくてはならないものですが、「食」の科学は、科学の世界の中で必ずしも重要な学問分野として捉えられていないように感じます。 「食品学」や「栄養学」を生業にしている私でも、「物理学」や「分子生物学」の方がより“ 高尚”に見えます…

“真のおいしさ”を理解するには? 「知性食い」と「感性食い」

「料理と科学のおいしい出会い」という本を書き、料理のおいしさを科学の面から迫りましたが、執筆している最中、私の頭の片隅である声が絶えず聞こえていました。 「科学だけで、おいしさがわかると思うなよ。」 料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食…

「芸術的に見せた料理はおいしい!?」という研究

グルメサイトで行きたい店を選ぶときや、レストランで写真付きのメニューを見て注文するとき、さらにコンビニやスーパーで食べものを選ぶときなど、私たちは基本的に眼で見た情報を頼りにお店や料理、食べものを選んでいます。 料理を口にする前には、食品の…

備蓄をする人は5割が限界? その背景にある「備蓄の壁」とは

昨日とおととい、仙台市消防局に行ってきました。 仙台市危機管理室減災推進課が主催する「地域地震防災アドバイザー研修会」で講演するためです。「大震災を生き抜くための食事学」という本を出していたこともあり、「震災と食」に関する講話の依頼を頂いて…

経験によって得られるもの、失われるもの

出張でカナダに来ています。8年前に2年ほど研究留学で生活していた国です。留学以来の渡加です。 あえて昔の馴染みのスーパーで売られているパックの寿司を食べましたが、いろいろな意味で“普通”でした。 以前、海外で安いsushiを食べると、日本の寿司との…

Q. 栄養を摂るために食べるのに、吸収を抑えるトクホってなんか矛盾してません?

私の講義での学生からの質問。 A. 食べることに多くの役割を求めるのが、人間です。 脂質や糖質の吸収を抑える特定保健用食品(トクホ)や健康食品がたくさん上市されています。「食べるのをガマンしない」といった謳い文句とともに。 そもそも人は何のため…

新食品への恐怖と興味の背景にあるもの〜食品心理学の視点から〜

今日は虫の日でした。今日の講義の終わり頃に、前のブログ記事のような話をちょっとしました。そうしたら、学生に講義の終わりに毎回書いてもらっているコメント票の一つに「虫が気持ち悪すぎて、今日の講義がどんな内容だったか忘れるくらい強烈なイメージ…

「ヒトの肉を培養して食べる」ということ

見つけてから1ヶ月以上、ずっとモヤモヤしていたニュース。 WIRED.jpから(抜粋)。 恐竜もセレブも、人造肉にして食べてしまうレシピ:ギャラリー 透明な肉や、セレブの幹細胞を培養した肉など、培養された人造肉の可能性を追求する「レシピ本」を紹介。 …

五輪開催地決定を前に 〜福島県出身者として〜

もうすぐ、決まりますね、開催地。 こういうニュースがありましたね。 東京五輪招致:汚染水漏れに質問集中 海外メディア 毎日新聞 2013年09月05日 00時06分(最終更新 09月05日 01時00分) 【ブエノスアイレス藤野智成】2020年夏季五輪開催地を決める国…

「思ったんだ。オムライスって、最高の“メッセージツール”じゃないかって…」

スマホに「アプリ」って、ほとんど入れないのですが、何かの拍子に見つけたこのアプリ。↓ 『iOmeletrice』開発: THE AGE 無料 オムライスの上にケチャップで文字が書けるという…。卵の研究者としては、思わずダウンロードしちゃいました。 アプリの「説明書…

「“試験管培養肉”ハンバーガー」の登場は、“食料生産新時代”の幕開けか?

先月はじめ、試験管でウシの細胞を培養してつくられた“試験管培養牛肉”を使ったビーフバーガーが調理、試食されるというニュースがありました。 (画像:CNN.co.jpより) オランダのマーストリヒト大学の生理学者マルク・ポスト教授らが、ウシの幹細胞を培養…

シェフは将来、心理学や脳科学が“必修”になる?

昼食がよくパン派かごはん派かに分かれるように、朝はトーストと目玉焼きとか、卵かけごはんなどの定番の食事になる人が多いでしょう。 一般的に家で食べる食事は、いつもの食事を求めがちなのに対し、たまに外食する場合などは、普段とは変わったものが食べ…

“おいしさ”は料理の中ではなく、脳の中にある

先日、久しぶりに外で焼肉を食べました。パワーを得たい時は、やはり肉ですね。 炭火で肉を焼く際、網の上で焼かれる音、肉の焼き目、立ち上る香り、そして食べた時に肉からほとばしる肉汁の風味やとろける食感によって「おいしさ」を感じます。 おいしい料…

対戦相手を“食べて”応援するということ

ワールドカップ(W杯)出場を目指すサッカー日本代表が、ただいまオーストラリアと対戦中。 もちろん、“国民の義務”として応援してますよ。 よく、「対戦相手国の料理を食べて応援」というニュースを目にします。 南アフリカのワールドカップでは、例えば「…

3ボーイズ@夜のコーヒーショップ

昨日、夕食の後、近くの喫茶店にコーヒーを一杯ひっかけに行きました。 その店のその時間の客層は大学生やビジネスマンが主流で、ノートパソコンや本を開いている人が多めといった風景です。 小さい丸テーブルの席に座って、本を読みながらコーヒーをすすっ…

朝食に「パン屋がごはんを、米屋がパンを食べる」という現象

最近、学生と交わした会話3つ。学生Aさん「実家はパン屋なんですが、朝食は“ごはん”でした。」私「えっ、朝、焼きたてのパンとか食べるんじゃないの!?」学生Bさん「私の親戚が米の卸をやっているんですが、朝は“パン派”だと言ってました。」私「ほ、ほんと…

ストレス時、女性は「過食」に、男性は「絶食」に向かう?

今日の大学1年生向けの少人数授業での話をひとつ。 「おいしさと食品開発」というテーマで、全7回の話をしていますが、今日のテーマは「おいしさの心理学」について、以前このブログでも紹介した「味わいの認知科学」という本のあるセクションについてディ…

「食は人なり」?それとも「人は食なり」?

前回のつづき。 前のブログでは、食べものの持つステレオタイプで、それを食べた人の「女性らしさ、男性らしさ」や「パーソナリティ」などが判断される「食は人となり仮説」を紹介しました。 プランスの有名な美食家、ブリア・サヴァランの著書「美味礼賛」…

「女性的食品」と「男性的食品」

先日の大学院講義「食品開発学特論」で、院生たちとディスカッションしたネタをひとつ。 いきなりですが、ある人の一日の食事メニューを下に示します。 朝食 クリームチーズベーグル 1個 オレンジジュース 1杯 コーヒー 1杯 昼食 ツナとレタスのサンドウ…

「食とニューロ・マーケティング ~文理融合の新領域~」

本日の午後、勤務先の大学で外部講師による講演がありました。学内に、その案内のポスターが以前から貼ってありました。 講演は、私と同じフードビジネス学科の都先生の「食品マーケティング戦略演習II」の講義の一環として行われ、授業を取っていない学生・…

「単調な食事を続けていると食欲がなくなる」のはなぜか?

以前にこのブログで話題にした「味わいの認知科学」*1という本の感想を一つ。 「食における“味わい”とはなにか?」について、分子生物学と実験心理学を専門とするお二方によって編集されたこの本。 読んでみて実におもしろい。読み進めていくうちに、線がが…

食と放射性物質の問題 〜何を信じたらいいのかわからない世の中で、唯一“はっきり”言えること〜

食と放射性物質の問題に関しては、「政府が放射性物質に関する情報を隠しているかもしれない」という不安を抱いている方が多いのではないかと思います。 食品は自分の体の中に入れるものですから、「信頼」が不可欠です。食品中の放射性セシウムの規制値が20…

ブロッコリーを「やけに緑色のカリフラワーだなぁ」と思った世代

以前読んだ歌人の穂村弘さんの本「君がいない夜のごはん」に書いてあったことで、私もふむふむと思ったエッセイがありました。 ちょっとだけ紹介します。 凄いブロッコリー 先日、若い編集者のMさんと打ち合わせをしたときのこと。 M「連載、いつもありがと…

世界からの風評被害を耐え抜いた先には

以前私が書いたブログ「今の日本は、原発事故による風評被害の“被害者”にも“加害者”にもなりうるという現状の中で」が、残念ながら進行しつつあるようです。 福島ナンバーやいわきナンバーを嫌がる方は、いずれ、世界から同じ風評被害の目にあったとき、そこ…

今の日本は、原発事故による風評被害の“被害者”にも“加害者”にもなりうるという現状の中で

今、原発事故による風評被害は、国内と国外の「二重構造」になっています。つまり、世界的にみると、日本は海外の国から風評被害にさらされ、国内をみると、福島原発近くの住民はその他の日本の地域の方からの風評被害にさらされています。今後、今すでにそ…