夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

分子栄養学

昆布と椎茸の“合わせだし”が最強の理由 うま味「相乗効果」の分子メカニズム

私が「卵」の研究者だからかも知れませんが、「茶碗蒸し好き」と公言する方に、かなり会ってきた気がします。 フタを開けると立ち上がる上品な香り、つるりとした食感、そして日本人の遺伝子に組み込まれたほっとする「ダシ」への安心感などが、満腹でも茶碗…

あなたに“究極に合う”食を提供する「3Dフードプリンタ」のアナザ・インパクト

3Dプリンタの食品版「3Dフードプリンタ」は、ユニークな形のお菓子が作れるだけではなく、「誰でも、どこでも、食感のある“食事”を自動的に作ることができる」可能性があることを前のブログで書きました*1。 そのため将来、3Dフードプリンタは「究極の調理機…

「テーラーメイド食品」のインパクト 遺伝子で食をオーダーメイド@月刊「事業構想」

「事業構想大学院大学」*1という大学院大学をご存知でしょうか。 昨年2012年4月に、東京・表参道で開学したばかりの、事業アイデア立案から実現までの過程を指す「事業構想」を学ぶ専門職大学院です。 学長の野田一夫さんは、私の現在の所属機関である…

舌から脳までの“おいしさ情報”の「伝言ゲーム」

料理を食べて「おいしいっ!」と感じるプロセスは、食べものの「情報」を脳に伝える「伝言ゲーム」のようなものです。 例えば、味覚では、食べものの中に含まれる「味分子」が、舌の味蕾にある味細胞の表面にある「味覚受容体」にくっつきます。 受容体に味…

“おいしさ”は料理の中ではなく、脳の中にある

先日、久しぶりに外で焼肉を食べました。パワーを得たい時は、やはり肉ですね。 炭火で肉を焼く際、網の上で焼かれる音、肉の焼き目、立ち上る香り、そして食べた時に肉からほとばしる肉汁の風味やとろける食感によって「おいしさ」を感じます。 おいしい料…

出張講義@山形県立鶴岡北高校

出張講義の依頼があり、山形県立鶴岡北高等学校に行って来ました。 私の職場のある宮城県仙台市からお隣の山形県庄内地方にある鶴岡市までは、高速道路を使って約2時間半のといったところです。 鶴岡に行く前にGoogleマップで場所をチェックしましたが、鶴…

「食」の20年度、30年後の未来予想

今年もあっという間に「仕事納め」の12月28日。“おさまっていない”仕事が多々ありますが、いちおう「ひと区切り」の日となりました。 年末年始は、「これまでの1年」そして「これからの1年」を考えるきっかけを与えてくれる時期です。 2012年。私は、初め…

「遺伝子検査」とセットで“販売”しなければならないもの

DHCさんの「遺伝子検査 ダイエット対策キット」を実際に試してみました。 ほおの内側の口腔粘膜を送ってから数週間後、「肥満関連遺伝子 検査結果報告書」が届きました。 「肥満関連遺伝子」って何? 肥満関連遺伝子として一番有名なのは、脂肪の分解や燃焼…

開かれた「遺伝子検査」というパンドラの箱

自分が「血圧が上昇しやすい体質か」や「脂肪が燃焼しにくい体質か」などは、とても簡単に調べられるようになってきました。 高血圧、肥満関連遺伝子を調べる「遺伝子検査」を行う機関や民間の会社が、日本にもたくさん存在しています。 その中で、私たちに…

山中教授の「iPS細胞」から考える「食事療法の将来」

山中伸弥教授が人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発に関するノーベル医学生理学賞を受賞して、はや1ヶ月弱が経ちました。 ヒートアップしていた報道がだいぶ落ち着いたようですので、“食品研究者的”に思うところを書いてみたいと思います。 以前、再生医療に…

大学院のパンフレット

1ヶ月ぐらい前のことですが、来年度2013年度の学部と大学院の入学希望者用のパンフレットが完成していました。 今回、大学院用のパンフレットを紹介します。 宮城大学のパンフレットでは、毎年、学生が表紙デザインをするのが恒例となっています。今回の表…

幸せホルモン「オキシトシン」から思う震災1年

人に愛情や信頼の感情を呼び起こすホルモンに、「オキシトシン」というものが知られています。 オキシトシンは、授乳する母親の脳内で分泌され、母子の愛着の関係を形成したり、愛すべき対象や大事にする相手を心に刷り込むという、いわば「愛の物質」として…

震災後の栄養から考える「ライフステージ栄養学」と「オーダーメイド栄養学」

震災後の栄養事情から 今日、Webサイト上で見つけた「震災後の“栄養”」に関するカロリー不足*1とカロリーオーバー*2という“相反する”2つの記事から。 東日本大震災:避難所の食事、栄養に問題 1カ月後も解消されず−−宮城・南三陸 東日本大震災の避難所で提…

肥満なのは調理された食べ物を食べているから? ー体重の増加は食品の調理方法に依存するという研究からー

食べ物は体の“燃料”ですが、 「その燃料のエネルギー量は、食べ物に含まれる“カロリー”だけではなく、その“調理方法”にも関係している」という研究が11/7の米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)のオンライン版に掲載…

角館高校での模擬講義にて

先々月、秋田県立角館高等学校から所属学部へ模擬講義の依頼があり、私にお話が回ってきました。文化の日の前日の11/2がその出前授業の日で、朝7時頃に仙台の自宅から車で角館へと向かいました。 寒暖差の激しい秋の朝のため、東北自動車道を走っている間は…

料理を分子レベルで調べたい理由 −食の流れの中で−

前々回*1、前回*2の続き。 今から約11年前、大学院時代の「生体物理化学」という研究室から、「食品科学」という研究室の教員になりました。 ちょうど、食の研究分野では、食品そのものを研究するよりも、その機能性、特に「生体調節機能」に関する研究が…

人はなぜ二日酔いになるのか?

年末年始、お酒の飲み過ぎで「二日酔い」になった人もきっと多いことでしょう。 昨年の大晦日に、その二日酔いに関するちょっと面白い論文が出ました。それが、こちら↓。 Acetate Causes Alcohol Hangover Headache in RatsMaxwell CR, Spangenberg RJ, Hoek…

自分の体が”クラシックカー”から”ハイブリッドカー”に変わる時

最近ちょっとはまっているのが、穂村弘さんのエッセイです。歌人でいらっしゃるだけあって、言葉の選び方に独特の味わいとセンスを感じます。 最近読んだ「本当はちがうんだ日記」。本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)作者: 穂村弘出版社/メーカー: 集英社発…

講演の内容が新聞に掲載されました

10/6(水)にアエルで行った宮城大公開講座・食産業学部イブニングセミナー「アフターファイブに学ぶ食の未来」での講演に関する記事を、10/25(月)の河北新報さんの「食のページ」に写真付きで掲載していただきました。話した内容を非常に分かりやすくまと…

「イブニングセミナー」してきました

たった今、アエルで講演してきました。 公開講座 宮城大学食産業学部イブニングセミナー『アフターファイブに学ぶ食の未来―新世代のフードビジネスと私たち―』の1回目の講師として。 講演のタイトルは、以下の通りです。「同じように食べても、どうしてあの…

食べられたくないトウガラシ、しかし食べたいヒト

暑くなると、無性に辛いものが食べたくなります。本格的なインド料理やタイ料理が食べたい今日この頃です。 トウガラシなどの辛味の正体は、カプサイシンという成分なのは有名です。カプサイシンは、舌や口腔内にあるカプサイシン受容体であるTRPV1という膜…

「節約遺伝子仮説」から考える「美人の定義」

ヒトが生きるために食糧を簡単に得るようになったのは、ヒトの歴史の中でごくごく最近になってからのことです。人類の歴史は、飢えとの戦いだったといえるでしょう。 少量の食物を脂肪として体内に保存できることや、少量のエネルギーを効率良く利用して生き…

味覚は「言葉」によって発見され「レセプター」によって完結する

日本では味覚といえば、甘味、塩味、酸味、苦味、旨みの5種類が基本ですが、欧米では、甘味、塩味、酸味、苦味の4種類が長らく基本味として考えられてきました。 旨みの登場は、日本人の池田菊苗がうま味成分のグルタミン酸ナトリウムを発見したのが始まり…

かつおと昆布の合わせだしの「相乗効果」の解明

科学新聞に載っていた記事から。 昆布とかつおぶしからとっただしは、和食の基本です。丁寧にだしをとったすまし汁の上品な味を頂くと、思わず顔がほころびます。「日本人で良かった〜」と心から思える瞬間です。 昆布だしのうまみ成分のグルタミン酸にかつ…