夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

The Kitchen as Laboratory 新しい「料理と科学」の世界

本日、刊行となりました。 The Kitchen as Laboratory 新しい「料理と科学」の世界 (栄養士テキストシリーズ) 作者: Cesar Vega,Job Ubbink,Erik van der Linden,阿久澤さゆり,石川伸一,寺本明子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/06/23 メディア: 単行…

「料理の式」による新しい料理の開発 解説その4

これまでのつづき。 「料理の式」を用いた粘土による新しい料理の開発(実践版) チーズタルトのタルト部分を「青色」をチーズ部分を「黄色」とし、そのチーズタルトの「料理の式」と、その「粘土モデル」と「実際のお菓子」は次のようになります。 チーズタ…

「料理の式」による新しい料理の開発 解説その3

前回、前々回つづき。 「料理の式」を用いた粘土による新しい料理の開発(体験版) チーズタルトのタルト部分を「A(青色)」をチーズ部分を「B(黄色)」としたとき、「分子活動の状態(+、/、⊃、σ)」の記号をそれぞれ解説すると下のようになります。 下は…

「料理の式」による新しい料理の開発 解説その2

前回のつづきです。 【方法】 「料理の式」の定義について 「料理の式」はレシピに基づき、フランスの物理化学者エルヴェ・ティスの提唱した「食材の状態」(気体:G、液体:W、油脂:O、固体:S)および「分子活動の状態」(分散:/、併存:+、包合:⊃、重層…

書は芸術なのか? 食は芸術なのか?

国立新美術館の「ダリ展」を観てきました。 ダリの自伝には「六歳のとき、私はコックになりたかった」と書かれていることからもわかるように、ダリは「食」に強い関心を持っています。 晩年には料理本『ガラの晩餐』まで出版しています。 Dalí: Les Diners D…

「料理の式」による新しい料理の開発 解説その1

先日行ったサイエンスアゴラ2016に出展した「あらゆる料理を“式化”する ~料理を「料理の式」でとらえ、新しい料理を生み出そう!~」の解説をしたいと思います。 やわらかい論文風で。 【背景・目的】 私たちは、日々さまざまな「食」に囲まれて暮らしてい…

野性イナゴ VS 養殖イナゴ

夏が終わり、実りの秋を迎えようとしています。 秋の味覚といえば、なんといってもイナゴです。 研究でイナゴを“養殖”しています。養殖イナゴさんたちに、野性イナゴさんと戦っていただくことにしました。サッカーで。 野性イナゴ「ワイルズ」は、フォーメー…

「料理と科学のおいしい出会い」の韓国語版が発売されました

拙著「料理と科学のおいしい出会い」の韓国語版が発売されました。 編集者さんに何冊か送ってもらいましたが、表紙がかわいいです。 わりとハングルです。かなりハングルです。圧倒的にハングルです。 自分の名前の漢字しか読めません。 本文を見ると、イラ…

「スイーツ×テクノロジー」イベントで感じたこと

BAKEさんとSONYさんとの「スイーツ×テクノロジー」のコラボイベントに審査員として呼んでいただいて、参加しました。 率直な感想は、楽しかったです。ものすごく。 新しい「もの」や「考え方」を、ゼロから立ち上げることはハードルが高いため、やはり異分野…

アルコールで“だし”は取れるのか? その3

前々回、前回のつづき。 昆布やかつお節など、10種類の食材をほぼ100%アルコールの「スピリタス」で「アルコールだし」をとりました。 特に、かつお節とミックスナッツからとったものは、水割りにするとかなりおいしいものでした。純度の高いアルコー…

アルコールで“だし”は取れるのか? その2

前回のつづき。 10種の食材をアルコール度数96%の「スピリタス」に二晩浸して“アルコールだし!?“を取りました。 まずは、見た目から。抽出液の色がわかるように、真横からのアングルで。 昆布。 かつお節。 シイタケ。 にぼし。 ホタテ。 ビーフジャーキー…

アルコールで“だし”は取れるのか? その1

和食や日本食の“要”といえば、昆布やかつお節からの「だし」でしょう。煮物や汁物でのだしのうま味がなければ、文字通り“味気ない”ものになります。 だしは、当たり前ですが水から取ります。 「だしを取る」というプロセスを化学的に表現すると、昆布やかつ…

芸術としての料理の基本原理 〜多様性と統一性〜

先週、仕事帰りにクラシックコンサートを聴く機会がありました。 生のオーケストラの“音圧”が、体の芯に響きました。遠赤外線ヒーターのように、内からじわじわと気分が高揚します。 生音を浴びながら、料理と音楽との類似性を考えていました。 興味をかき立…

“自販機化”する料理

前回の続き。 昔の未来予想やアニメそしてSFには、「人型ロボット」が登場します。家事ロボット、運転手ロボット、執事ロボット、警官ロボット、殺人ロボット等々。 私たちが生きる現実の世界にも、ソニーの「AIBO」、ホンダの「ASIMO」、ソフトバンクの「Pe…

調理の“ロボット化”によって見えてくるもの

上海で『ラーメンロボット』が登場というニュースを見ました。 作っている動画を見ると、トッピングの乗せ方が、ちょっと残念です。↓ 日本で一世を風靡したラーメンロボット 元になっている技術は、日本の産業用機械メーカーの株式会社アイセイさんによるも…

TOKYO FM「未来授業」に出演しました

先週、TOKYO FM「未来授業」の講師を務めた回がオンエアされました。 「分子調理」や「食の未来」について話しています。Podcastで聴けるようです。 Podcast聴きましたが、われながら、眠くなる声だなと思いました。 ご興味のある方は、睡眠学習にどうぞ。

フードペアリングとファッションの“奥深さ”にある共通点

先日、ある集まりで、以前アパレル関係、今は食品関係にお勤めの男性の方とお話する機会がありました。その話の中で興味深かったことを一つ。 その集まりの最初で、私が「フードペアリング仮説」について、ちらっとお話しました。 フードペアリング仮説とは…

「今を生きる」人こそ、未来を考えよう

機械化や人工知能の進歩によって、近い将来「消える仕事、食えなくなる仕事」などをよく耳にするようになりました。 現在、働いている人は今の職業、学生などはこれから就く職業が、未来永劫安泰だと思っている人はおそらく少ないでしょう。今後、多くの人が…

未来を思う原動力とは? 〜「食」への不安と期待〜

最近、「未来」に関する書籍やTV番組などが多いように感じます。私が興味あるので、ただ目に留まるだけなのかもしれませんが…。 現代の未来への社会的関心は、世界のグローバル化の行方、人の予想を超えた新デジタル・新テクノロジーの登場、異常気象による…

「なぜ凍結卵は固まるのか」から「次の凍結卵の可能性」まで

昨年からブームとなっている「凍結卵」。だいぶ市民権を得てきた印象を受けます。さらに、凍結卵で「卵黄のお刺身」など新ジャンルの料理の開発も進み、凍結卵の世界はまだまだ大きな広がりを見せそうな勢いです。 もともと、卵黄が固まるゲル化という現象は…

“超遠心分離”目玉焼き 食材を“分解する”という調理アプローチ

以前のエントリーで、生果汁を遠心分離して、密度差のある「“遠心分離”アイスキャンディー」を作りました。“遠心分離”アイスキャンディー - 夜食日記 昔は入手困難だった世界中の食材が、現在比較的手に入りやすくなることによって、食材による料理の差別化…

「料理と科学のおいしい出会い」の中国語(繁体字)版が発売

昨年6月に化学同人さんから「料理と科学のおいしい出会い」という本を出させていただきましたが、昨年末頃、台湾の出版社から中国語の繁体字(はんたいじ)版の翻訳オファーをいただいていました。 その翻訳本が本日、化学同人の編集者さんから送られて来ま…

“遠心分離”アイスキャンディー

暑い日が続いています。暑すぎるとアイスクリームよりもアイスキャンディーが食べたくなるものです。 ラボで100%果汁を遠心分離したアイスキャンディーを作ってみました。 ひとまずスイカ、メロン、キウイフルーツ、桃、オレンジを5種類を準備。 家庭用ジュ…

NEW FOOD なにを、なぜ、どう、食べる?@WIRED

読みました。 おもしろかったです。WIREDさんぽい切り口の「未来の食」が並んでいます。ひとつひとつの特集で、ブログネタがいくつも書けそうです。 オフィシャルのサイトで概要は感じ取れるでしょう。 <a href="http://wired.jp/magazine/vol_17…

額装をいただきました

以前、『新潮45』で対談したビートたけしさんとの額縁入り写真を編集者の方から送って頂きました。 写真を見て、対談時のたけしさんの言葉がいくつか頭にフラッシュバックされました。 なんだかんだ一日中食べもののことばかりを考えている日がよくあること…

玉ねぎではなく長ねぎを“あめ色化”してカレー用にする方法

前回のエントリーで、「玉ねぎのあめ色化のスピードアップ」を図りました。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2015/07/05/215545" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2015/07/05/215545">カレーの玉ねぎの“あめ色化”をスピードアップさせる方法 - 夜食日記</a> アルカリ性側でメイラード反応が促進することから、玉ねぎにアルカリの塩である「重曹」を加えて炒めてみたとこ…

カレーの玉ねぎの“あめ色化”をスピードアップさせる方法

カレーはいつでもおいしいですが、暑くなるとよりカレーが食べたくなります。 本格的なカレーを作ろうとすれば、「玉ねぎを炒める」という作業は必須でしょう。玉ねぎをあめ色になるまで炒めると、甘さと独特の香りが生まれます。 しかし、玉ねぎをしっかり…

「都民の備蓄推進プロジェクト」

昨日、舛添東京都知事の記者会見において「自然災害に備えた自宅での備蓄について〜都民の備蓄推進プロジェクト〜」が公表されました。 &lt;a href="http://www.bousai.metro.tokyo.jp/1001855/1001884/1001890.html" data-mce-href="http://www.bousai.metr…

お腹にいる“下宿人”が気になる

人の願望はいろいろありますが、「健康」は古今東西を問わず、普遍的に切望されているもののひとつでしょう。とくに健康が損なわれてしまった場合はなおさらです。 私たちの普段の生活で、その健康に関係する二大ファクターといえば、「食事」と「運動」でし…

『スター・ウォーズ』のあの人を、森永『ダース』のドットで描く

5月4日は、『スター・ウォーズの日』ということをご存知でしょうか。由来は、劇中の名セリフ“May the Force be with you”と“May 4th”をかけていることから来ているそうです。 また、2015年12月に、新シリーズ3部作の第一弾『スター・ウォーズ エピソード7/…

カレー「専用米」の登場―料理のゴールを考えた『料理育種』

私たちが主食としている「一般米」と日本酒用の「酒米」の品種が違うことは多くの人が知っているでしょう。しかし、「カレー専用米」、「寿司専用米」、「リゾット専用米」が品種改良によって登場していることはご存知でしょうか。 カレー専用の米「華麗舞」…

なぜ多くの人々が料理の写真を撮って共有するのか?

以前のエントリーで、以下のような記事を書きました。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2015/03/19/214336" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2015/03/19/214336">レストランでの料理の写真撮影は、なぜ問題なのか? - 夜食日記</a> レストランでの写真は、TPOでしょう。 写真を撮るのは、食べると消えてなくなる料理を記念に残したいという気持ちもあるでしょうが、Twit…

現代フランス料理科学事典

ご恵贈いただきました。 現代フランス料理科学事典 (栄養士テキストシリーズ) 作者: ティエリー・マルクス,ラファエル・オーモン,的場輝佳,八木尚子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/03/21 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見…

レストランでの料理の写真撮影は、なぜ問題なのか?

レストランなどでの外食時に、料理の写真を撮る人を以前よりもよく見かけるようになりました。 レストランでの写真撮影に対して、私はほとんど気にならないものの、全く気にならないわけでもないという感じです。レストランの種類などによってもケースバイケ…

焼き芋はどこまで甘くなるのか?―低温加熱による限界への挑戦

スーパーの入口付近などで「焼き芋」が売られているのをよく目にしますが、今巷でちょっとした「焼き芋ブーム」なのだそうです。私も買いたいと思う時に限って、だいたい売れ切れています。 サツマイモは、「蒸し芋」よりも「石焼き芋」にした方がおいしいの…

絶望と希望と願望と宿命―4年目の3.11に思うこと

東日本大震災から4年。3.11後の混乱期に大学に入学してきた新入生が、来週卒業式を迎えます。あの年の講義開始は1ヶ月遅れ、入学式は約半年後の9月末でした。 絶望と希望は表と裏 人が絶望の淵に立たされた時、そこから生きていくためには、希望が必要…

「パスタのゆで方 大実験!」@dancyu

先日、『dancyu』の最新号を送って頂きました。 dancyu(ダンチュウ) 2015年 04 月号 出版社/メーカー: プレジデント社 発売日: 2015/03/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 巻頭の特集はパスタ。春が近づいてくると、私も「パスタララララン♪」っ…

おいしさの理想―食の「真・善・美」

おいしい料理に興味を抱く人は、たくさんいることでしょう。 おいしさは美味しさ、すなわち「美しい味」と書きますが、文学、美術、音楽などの美が大学で扱われているのに対し、食の美についてはまだしっかりと体系化されて扱われていないのが現状です。 人…

新印象派の科学への接近と解放―総合芸術としての料理の未来

先日、東京都美術館で行われている「新印象派―光と色のドラマ Neo-Impressionism, from Light to Color」を観ました。 新印象派 光と色のドラマ 見どころより一部抜粋。 印象派は、揺れる水面や陽光のうつろいなど、自らの目に映る世界を描き出そうとし、そ…

料理と芸術のおいしい出会い

私たちは、なぜおいしい料理に魅了されるのでしょうか? たとえば、レストランでの食事はとても魅力的です。整然と並べられ食器、調和のとれた場の雰囲気。テーブルは明るく照らし出され、洗練されたサービスによって鮮やかに盛りつけられた料理が運ばれてき…

ビートたけしさんと対談しました

本日発売の『新潮45』に、対談記事を掲載して頂きました。 新潮45 2015年 03 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/02/18 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る

トランスグルタミナーゼによる「しらすバーガー」の創作

食品成分を“つなぎ合わせる”酵素の一つに、「トランスグルタミナーゼ」というものがあります。 以前、このブログでも紹介しました。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2013/09/03/215737" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2013/09/03/215737">多彩な“食感”を生み出す「トランスグルタミナーゼ」の分子ガストロノミーへの応用 - 夜食日記</a> トランスグルタミナーゼを使…

なぜホット・アイスクリームは高温で固まり、低温で溶けるのか?

一連の“ホット・アイスクリーム”のエントリーのつづき。 <a href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/21/230554" data-mce-href="http://yashoku.hatenablog.com/entry/2014/12/21/230554">“ホット・アイスクリーム” 温めると固まり、冷やすと溶ける - 夜食日記</a>

もうすぐ本が出ます。『「もしも」に備える食』

管理栄養士、食育指導士、防災食アドバイザーの今泉マユ子さんと共著で『「もしも」に備える食 災害時でも、いつもの食事を』という本を出すことになりました。 「もしも」に備える食 災害時でも、いつもの食事を 作者: 石川伸一,今泉マユ子 出版社/メーカー…

「節約遺伝子仮説」vs.「料理仮説」

以前読んだ本で、おもしろいなと思ったこと。 火の賜物―ヒトは料理で進化した 作者: リチャード・ランガム,依田卓巳 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2010/03/26 メディア: 単行本 購入: 6人 クリック: 62回 この商品を含むブログ (17件) を見る …

月刊『化学』に寄稿しました

もうすぐ発売になる化学同人さんの月刊『化学』2015年2月号に、解説記事を寄稿させていただきました。 タイトルは、「夢の卵"デザイナーエッグ"を目指して ──個人の体質に合わせたテーラーメイド食品の開発」というものです。 <a href="http://www.kagakudojin.co.jp/book/b193052.html" data-mce-href="http://www.kagakudojin.co.jp/book/b193052.html">月刊化学 2015年2月号 - 株式会</a>…

「分子調理」のおいしい世界 第3回 @応用物理

応用物理学会の機関誌『応用物理』において、『「分子調理」のおいしい世界』の第三弾を掲載して頂きました。 ノーベル賞受賞式・晩餐会に同行された先生の臨場感のたっぷりの報告がとても興味深いものでした。 もう一つ、ノーベル賞受賞に際しての応用物理…

『Vesta(ヴェスタ)』に寄稿しました

食文化誌『Vesta』の最新号の第97号(2015年1月10日発売)に、記事を掲載して頂きました。 Vesta (ヴェスタ) 2015年 02月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会 発売日: 2015/01/10 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 特集は『やわらかい食…

食の未来を考える意味

年のはじめは、新しい一年の目標やその先の「未来」を考えるのにいいタイミングです。将来や未来予測に関するTV番組やWebの記事もよく目にします。 人はこれまでさまざまな未来を想像してきました。突拍子もない空想レベルのものから、データに基づいた社会…

新しい料理を作るための“ゲル化”

国内外の前衛的なレストランでは、増粘剤などを使って、新しい食感を持つ料理が次々と開発されました。この増粘剤によるゲル化の役割は、液体の食材に粘りを増して形を保つことと、完全に固めることにあります。 増粘剤を使って、液体の周りをゼラチン質で覆…