夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

AIは感動する料理を作れるか?

 料理王国の11月号が大学に届きました。

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 8月のSmart Kitchen Summit Japan 2018でちょっとだけ取材を受けたものを載せていただいたからでしょう。

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料理王国2018年11月号

料理王国2018年11月号

 

 特集は、「AIは敵か、味方か?」という、料理王国さんのこれまでの特集の中でもかなり趣の違う内容です。興味深い記事が並んでいます。

 

 Smart Kitchen Summit Japanでお話した講演の最後の話題に、このようなスライドを入れていました。

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 料理人には、アーティスト、科学者、デザイナー、技術者としての側面があるでしょう。私が今後最も重要になってくるのは、シェフのアーティスト属性ではないかと考えています。

 現代の芸術哲学の代表者であるS.K.ランガーは著書「芸術とは何か」で、「芸術」を次のような定義を提案しています。

あらゆる芸術は、人間感情を表現する、知覚可能な形式の創作である。

 芸術作品で感動するのは、作品に乗り移った芸術家の感情に感動しているということでしょう。

 料理で感動するのは、その料理の味や香り、テクスチャーといった科学面のおいしさによる感動もありますが、料理を作った人の感情によって呼び起こされるおいしさも伴わなければ、真の感動する料理には結びつかないように感じます。

 AIやロボットによって、テクニカル的にこれまで見なこともない斬新な料理や、その人の脳の働きをニューロガストロノミーによって調べ、情動をくすぐるような料理はおそらく将来つくられるでしょう。

 しかし、料理が芸術作品であるなら、その作り手の感情が料理から感じられなければ、真の感動を惹起することはできないのではないかと思います。

 逆に言えば、料理人がAI時代に最も注力すべきところはその人のアートの部分だといえるでしょう。