夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「第4次産業革命と栄養学の未来」

第28回女子栄養大学栄養科学研究所講演会において講演させて頂きました。 全体のテーマは「第4次産業革命と栄養学の未来」、私の講演タイトルは「未来の食を考える上でのフレーム ~新しい食のテクノロジーとどう向き合っていけばいいのか?~」というものでした。

女子栄養大学栄養科学研究所所長の香川靖雄先生が「第4次産業革命とは何か、栄養学はどう変わるか」というタイトルで先にお話をされ、先生のご専門の「遺伝子栄養学」「時間栄養学」「精神栄養学」の話題がありました。

それぞれの栄養学が、「食のテクノロジー」によって発展し、私たちにものすごい恩恵をもたらすであろうというイメージ図が私の頭に浮かんでいました。

たとえば、遺伝子栄養学は、簡便な遺伝子診断キットの開発と遺伝子多型のビッグデータと人工知能(AI)によって、より個別化された食事が提供できるになるでしょうし、時間栄養学は、血糖値と食事の内容がリアルタイムでつながることによって、食べる最適なタイミングがわかるようになるでしょうし、精神栄養学は、脳機能の簡易的な測定法の発達によって、幸福ホルモンのオキシトシンを出す食事が開発されるようにもなるでしょう。

 

また、参加者の方々の興味は、「第四次産業革命と栄養学の未来」というよりも 「第四次産業革命の発展によって、管理栄養士・栄養士である私たちの仕事、食産業に関わる私たちの仕事がどうなるのか?」にあるように感じました。

今回参加して頂いた方は、給食関係や病院で管理栄養士や栄養士として働いている方々が多いようでした。

興味深かったのは、フードテックやスマートキッチンサミットなどのイベントに参加したことがあるかお聞きしたところ、全く手が上がらず、ゼロだったことです。

「栄養士×食のテクノロジー」が、今の時点であまり結びついていないことが問題だなと思った一方、つながるとものすごく“深まる可能性”を感じました。

フードテックなりスマートキッチンの分野で、先導しているのはフードが専門の方ではなく、テクノロジーに強い方々でしょう。その方々と食のスペシャリストである栄養士の方々が組むことで、特に食と健康分野ではさまざまな問題解決につながったり、新たなサービスが生まれる予感がしますが。

 

さらに、最後の質疑応答タイムがこれまたとても楽しかったです。

頂いた質問の一つに、病院にご勤務の方から「昔から写真で患者さんの食事管理をしており、最近AIによるエネルギーの自動計算ができるようになったが、その正確性は今後向上していくのか?」というものがありました。今の写真の画像解析技術に物足りなさを感じていたように推察しました。

テクノロジーの付き合い方としては、たとえば「AIが仕事を奪う」といったことに敏感に反応してもいけませんし、「AI?、たいしたことないよ」と軽視するのもいけないでしょう。 食のテクノロジーにそれなりに関心を持ちつつ、その可能性に思いを馳せながら、さらに人だからできることは何かを考えていくスタンスが重要ではないかと思いました。

私的には、食のサイエンスとテクノロジーをうまくつなげられる立場になれればと思っています。それは人と人をつなげることでもあります。

今日はいろいろな方とお話でき、つながれたことが何より幸せでした。

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